
退職代行サービスを利用することは労働者の自由であり、違法ではありません。
ただし、一部の退職代行業者は、弁護士法に違反するサービスを提供している場合があります。
適法な退職代行サービスの見極め方を学び、トラブルに巻き込まれるリスクを軽減しましょう。
本記事では、退職代行における違法行為の具体例や、サービスの法的効力についてまとめました。
違法なサービスで発生し得るトラブルも紹介するため、退職代行の利用を検討している方は参考にしてください。
退職代行を利用することや、サービス自体に違法性はありません。
退職代行が法律違反になるのは、運営元が非弁行為をしているケースです。
非弁行為とは、弁護士にしか認められていない行為を、無資格者が報酬目当てで行うことをいいます。
| 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。 |
退職代行サービスが、以下の条件を満たす場合は非弁行為が成立します。
違法業者を避けるためには、運営元を十分に確認することが大切です。
>>関連記事「退職代行 非弁行為」はこちら
関連記事:非弁行為とは?弁護士法違反の行為を退職代行や保険会社の具体例で解説
退職代行サービスは、運営主体によって以下の3種類に分けられ、それぞれ対応可能な業務範囲が異なります。
| 運営元 | 弁護士 | 労働組合 | 民間企業 |
| 退職意思の伝達 | ○ | ○ | ○ |
| 条件の交渉 | ○ | ○ | × |
| 残業代などの支払い要求 | ○ | ○ | × |
| 損害賠償請求 | ○ | × | × |
| 訴訟対応 | ○ | × | × |
各運営元の特徴を見ていきましょう。
弁護士または弁護士法人が運営している退職代行は、3種類の中でもっとも業務範囲の広いサービス形態です。
退職意思の伝達はもちろん、以下のようなあらゆる法律事務を依頼できます。
損害賠償請求や訴訟対応を行うことが認められているのは、弁護士のみです。
法的なトラブルを抱えている場合や、会社と揉め事が発生し得る場合には、弁護士に依頼するメリットが大きいでしょう。
ただし料金は、労働組合や民間企業による退職代行と比較して高額な傾向にあります。
会社との関係性や現在の状況によって、弁護士の必要性を判断しましょう。
関連記事:退職代行は弁護士提携だと安全?発生しがちな違法行為やデメリット
労働組合が運営主体の退職代行には「団体交渉権」が認められています。
そのため、労働者の代理人として、有給の取得や未払い賃金の支払いなどを求めることも合法です。
裁判などの法的な手続きは代行できないため、弁護士運営の退職代行と比較して、料金が安い傾向にあります。
費用を抑えたいときや、訴訟に発展するほど深刻ではないケースに適しているでしょう。
ただし、近年では無資格業者が「偽装労働組合」として活動している事例も見られます。
運営元や支払い先の名義に「株式会社」や「合同会社」が含まれている場合は、偽装の可能性が高いため注意しましょう。
関連記事:退職代行は労働組合に依頼すべき?違法リスクや弁護士との違いを解説
民間企業が担える業務は、退職意思の伝達に限定されます。
無資格業者には意思決定権がないため、交渉による条件の変更・調整は認められていません。
会社と話し合う事項が一切ない場合は、民間企業を利用するのも1つの選択肢です。
しかし退職の現場では、何らかの折衝を求められる場面が多いため、労働者の意思を伝えるだけでは手続きが停滞しかねません。
安全かつスムーズに退職したい場合は、労働組合や弁護士による退職代行サービスを検討しましょう。
退職代行の業務内容が弁護士法に抵触し得るのは、おもに運営元が民間企業のケースです。
ここでは、非弁行為に該当する具体的な事例を見ていきましょう。
それぞれ解説します。
関連記事:非弁行為とは?弁護士法違反の行為を退職代行や保険会社の具体例で解説
無資格の民間企業が、労働者の代理人として会社と退職条件の交渉を行うことは、弁護士法に違反します。
以下の要件を満たしており、非弁行為が成立するためです。
有休消化や残業代、退職金などの問題には法律が絡むため、退職条件の交渉を行うことは「法律事務」だと判断されます。
なお、労働組合による退職代行は、労働組合法で認められた範囲内で条件交渉を行えます。
未払い賃金の支払い要求も「法律事務」にあたるため、無資格業者が行うと非弁行為に該当します。
たとえば、以下のようなケースがあげられます。
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業者側に積極的な交渉の意思がなくても、法的な問題に関する話し合いを行うことは違法行為です。
退職代行サービスに関連する弁護士法違反については、東京弁護士会も注意喚起を行っています。
退職代行サービスを提供する民間企業の多くは、弁護士との提携を謳っています。
弁護士が受任した案件を、弁護士自身が処理している場合は問題ありません。
しかし、弁護士は監修や指導をしているに過ぎず、実際の交渉を無資格者が行っている場合は弁護士法違反となります。
なお、依頼者から金銭を受け取り、問題の処理を弁護士や労働組合に改めて依頼する行為も違法とされています。
弁護士法72条では、無資格者による法律事務の周旋(仲介・紹介)も禁じているためです。
近年では、無資格業者による弁護士法違反が取り沙汰されているため、表立って違法行為を宣伝する業者は少ない傾向にあります。
弁護士や労働組合との提携をアピールし、適法であることを装う業者に注意が必要です。
退職代行サービスを通じた退職が有効か否かは、民法に従って判断されます。
法律上の基本的なルールは、以下のとおりです。
詳細を見ていきましょう。
日本の法律において、退職意思の表示手段を制限する規定は存在しません。
退職代行サービスを利用した場合も、本人が退職意思を通知したケースと同様に扱われます。
労働者の退職の自由は、民法にもとづき保障されており、就業規則で法定権利を奪うことは許されません。
そのため以下のような社内規定は、原則として無効となります。
ただし、ルールを守らなかったことで会社に不利益を与えた場合は、後々トラブルに発展する懸念が残ります。
関連記事:退職代行を使うとどうなる?転職への影響・後悔しないポイントを解説
期間の定めなく雇用されている労働者は、いつでも退職を通知でき、雇用契約は通知日から2週間後に終了します。
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当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。 |
本人が直接申し出る場合はもちろん、退職代行によって通知する場合でも、上記のルールは有効です。
ただし、非弁行為が疑われる業者からの申し出や、委任状のない意思通知には対応しない会社もあります。
違法業者を利用してしまうと、退職手続きそのものが無効になるおそれもあるため、厳重な注意が必要です。
契約社員やパートタイマーなどの有期雇用労働者は、無期雇用労働者と退職のルールが異なります。
雇用の期間が定められている場合、期間満了時以外の退職は、原則として認められていません。
そのため、契約期間中に退職代行を利用しても、会社側に拒否される可能性があります。
なお民法第628条では、やむを得ない事由がある場合に限り、有期雇用労働者の意思にもとづく退職を認めています。
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当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。 |
一方、有期雇用の期間が1年を超えるケースにおいて、契約初日から1年経過後は、期間満了時を待たずに退職可能です。
違法業者による退職代行サービスを利用してしまうと、犯罪や紛争に巻き込まれるおそれがあります。
とくに発生リスクの高い問題は、以下のとおりです。
それぞれ見ていきましょう。
退職代行サービスの違法性が取り沙汰されていることに伴い、多くの会社が非弁業者への警戒を強めています。
とくに、リスク管理を徹底している大企業では、連絡してきた代行業者に以下の内容を確認することが一般的です。
| 確認事項 | 業者に提示を求めるもの |
| 実在している事業者か |
|
| 労働者本人から正式に依頼を受けているか |
|
電話口で対応せず、メールや文書などの書面で改めて連絡するよう求めるケースもあります。
会社側に「非弁業者の危険性が高い」と判断されれば、コミュニケーション自体を拒否され、退職手続きが進行しません。
そのため、違法業者に退職代行を依頼してしまうと、退職が失敗に終わるリスクが極めて高くなります。
違法業者による退職代行サービスでは、費用面の問題も発生しやすい傾向にあります。
退職代行の料金に関して、よくあるトラブル事例は以下のとおりです。
契約書や利用規約に「返金」「追加費用」「キャンセル」などの規定が明記されていることを確認しましょう。
関連記事:退職代行の平均金額はいくら?相場や雇用形態別の費用目安を解説
会社との交渉権限がない業者を選ぶと、不利な状況に追い込まれることがあります。
以下のように不当な条件を突きつけられた場合でも、無資格業者が「法律違反だ」と反論することは、非弁行為に該当するためです。
サービスに違法性がなくても、民間企業による退職代行には、希望どおりの退職条件を実現できない懸念が残ります。
退職代行は、2018年に誕生した歴史の浅いサービスであり、過去の判例が少ない傾向にあります。
非弁行為にあたるか否かは、個別の事実関係をもとに判断されるため、依頼者サイドが業者の違法性を見極めるのは困難です。
退職代行が必要なときは、弁護士や労働組合が運営しているサービスを利用し、リスクの軽減を図りましょう。
退職代行ガーディアンは、労働組合法人「東京労働経済組合」が運営する退職代行サービスです。
25年を超える労働組合運営で培ったノウハウをもとに、依頼者の権利を守りながら安全な退職をサポートしています。
当組合では、退職代行業界の健全化を推進するために、LINE相談窓口を設置しました。
違法業者を利用してしまった方や、適法な退職代行の見分け方を知りたい方は、お気軽にご相談ください。
累計4万件以上の実績にもとづき、安全・安心な退職の方法をご案内します。
この記事の監修者
長谷川 義人
東京労働経済組合
労働組合代表
プロフィール
高校を3ヶ月で中退しフリーターとなる。その後、20歳で定時制高校に通い25歳で定時制大学を卒業。
Tech系ITベンチャー企業にてBtoB営業からキャリアをスタートし、独立して代表として経営まで幅広く経験。
現在は「令和ならではの労働問題解決」に取り組むため、労働組合法人東京労働経済組合の代表に就任。
適法運営を徹底する退職代行サービス「退職代行ガーディアン」を運営し、日本の退職問題の改善と人材の最適配置を支える新たな社会インフラの確立に取り組む。
違法な退職代行が横行する業界の健全化にも力を入れており、労働者が安心して「次の一歩」を踏み出せる社会の実現を目指している。