
退職を決意したら、できるだけ有休を消化してから退職したいと考える方が多いでしょう。
しかし実際には「辞めるのに休みたいと会社に言い出しづらい」などの理由で悩むことも少なくありません。
しかし、有休は労働者の正当な権利です。
ここでは、適切に手続きを進めてスムーズに有休を取得してから退職したい方のために、基本的な知識や起こりやすいトラブル、その対処法について解説します。
この記事を読むことで具体的な行動手順が把握できるようになりますので、参考にしてみてください。
有給休暇とは、一定期間勤務した労働者が給与を受け取りながら休暇を取得できる制度です。
疲労回復や、心身のゆとりある生活を保証する目的で設けられています。
有給休暇として認められれば、会社を休んでも給与が減額されることはありません。
有給休暇の付与日数は、勤続年数ごとに以下のように法律で決められています。
| 勤続年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
この日数はフルタイム勤務を前提としたものであり、週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者については以下のように付与日数が変わります。
| 週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 継続勤務年数 | |||||||
| 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年~ | |||
| 付与日数 | 4日 | 169日~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121日~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
| 2日 | 73日~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
| 1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 | |
雇用開始から6か月間継続して勤務し、かつその期間の出勤率が8割以上の場合に発生します。
出勤率が著しく低い場合、有給休暇が付与されない可能性があるため注意が必要です。
参考:(PDF)厚生労働省:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています[PDF]
有給休暇について大まかに知っていても、その仕組みや内容を明確に理解していない方もいるでしょう。
ここでは有給休暇の基本的な特徴について解説します。
退職前に消化を考えている方も確認しておきましょう。
有給休暇は労働者に認められた権利であり、基本的に自由に取得できます。
休みたい日に申請すれば、会社は原則としてこれを拒否できません。
労働者には「時季指定権」と呼ばれる、休む日を自分で指定できる権利があります。
原則として、会社は労働者が希望する日に休暇を認める必要があります。
ただし、繁忙期に多くの社員が同時に休む場合など、業務に支障が出る恐れがあるときは、会社が「時季変更権」を使って別の日に有給休暇を取得するよう求めることが可能です。
ただし、この権利は合理的な理由がある場合に限られます。
なお、退職時に有給休暇を消化するとなると、長期の休みが必要になることもあるはずです。
このような場合は、業業務の状況を考慮し、可能な範囲で調整を行うことも重要です。
有給休暇は2年で時効を迎えます。
付与された有給休暇を使わずにいると、時効により権利を失う点に注意が必要です。
退職時に「すべての有休を消化しよう」と思っても、すでにその一部が時効を迎えていたというケースもあります。
なお、有休を消化できるのは在職中の労働日のみです。
退職後は行使できなくなってしまうので、計画性をもって消化していくことが重要です。
「有休を取得すると、理由をしつこく聞かれるのではないか」と不安に感じる方もいるかもしれません。
しかし、 有給休暇は法律で認められた権利なので、理由を説明する必要はありません。
もし理由を聞かれた場合は「退職に伴う有休の消化です」と一言添えるだけで問題ありません。
有給休暇は認められている権利ですが、突然「明日から有休を使い、その後退職します」と伝えても、引き継ぎがうまくいかずトラブルにつながりやすくなります。
一般的に、退職前の有休消化はまとめて取得することが多いので、余裕をもってスケジュールを考えておきましょう。
ここでは、有休消化を成功させるための基本的な流れについて解説します。
まずは、現在の有給休暇の残日数を正確に把握しましょう。
有休は付与された日から2年間有効なので、現時点で何日残っているか確認が必要です。
注意しなければならないのは、勤続年数や出勤状況によって付与日数が異なる点です。
確認が難しい場合は、人事部に確認を依頼するのが確実です。
企業によっては給与明細や勤怠システムで確認できる場合もあるので、先にこちらを確認しておくとよいでしょう。
残日数がわかったら、できるだけ早めに上司に退職の意思を伝えましょう。
その際、有給休暇を使いたいこともあわせて相談します。
ただし、退職と有休消化を同時に伝えると、印象が悪くなり、トラブルにつながる可能性があります。
まずは退職の意思だけを伝え、その後で有休消化について相談するのが望ましいでしょう。
場合によっては引き止められて、予定通りに有休を消化できないことも考えられます。
退職の申し出時期は、就業規則で定められていることが多いので、事前に確認しておきましょう。
民法では「退職の2週間前までに申し出れば退職できる」(※)とされていますが、就業規則で1か月前までと定めている会社もあります。
辞めるからといって強引に進めるのではなく、相手の立場に配慮し、丁寧な話し合いを心がけましょう。
(※)
関連記事:退職届の書き方は?トラブルを避けるポイントと提出タイミングも確認
退職日から逆算して、どのタイミングで有休を取得するか計画しましょう。
退職する際に有給休暇を消化しようと考えると、まとめて連続で取ることを検討する方が多いはずです。
ただ、時期によってはそれが難しいこともあるでしょう。
無理に連休にこだわらず、柔軟にスケジュールを組む姿勢が求められます。
長期休暇の取得に心理的な抵抗がある場合も、何回かに分割する形であれば言い出しやすくなるのではないでしょうか。
スケジュールを立てる際は、最終出勤日の前後どちらに有休を取るかを検討しましょう。
たとえば、5月末に退職したい場合、有休が20日間残っていれば、土日などの休日も含めて4月末を最終出勤日とし、1か月程度を有給休暇に充てることができます。
この場合、 有休消化前に引き継ぎを終えておく必要があります。
最終出勤日前に有休を取得する場合は、休暇に入る前に引き継ぎを済ませるのか、それとも休暇明けに行うのか、事前に周囲に伝えておきましょう。
トラブルなく退職するためには、周囲に負担をかけない形で引き継ぎを進めることが重要です。
引き継ぎの際は以下のような点に注意しましょう。
【引き継ぎに関する注意点】
業務内容によって異なりますが、一般的に引き継ぎに必要な期間は1か月程度です。
必要な書類や資料の準備に時間がかかることも考えられるので、余裕を持って進めておきましょう。
こちら側は引き継ぎに十分な時間をかけられるとしても、業務を引き継ぐ担当者が別の仕事で忙しいことも考えられます。
時間に余裕を持って準備を進めることが重要です。
関連記事:退職して会社に明日から行かないことは可能?注意点とおすすめの方法
実際に有給休暇に関してどのようなトラブルが起こっているのでしょうか。
ここでは、よくある具体的なトラブルと、対応策について解説します。
特に多いトラブルといえるのが、会社側から「有休は使えない」「休まれると困る」と、拒否されてしまうケースです。
「繁忙期だから無理だ」と一方的に言われ、休暇取得をあきらめてしまうケースもあります。
ですが、 有休は法律で認められているものなので、従う必要はありません。
ただし、トラブルを避けるためには早い段階で有休消化の意向を伝え、余裕をもって対応することも重要です。
退職代行や労働基準監督署などの外部機関に相談するのも一つの方法といえます。
後任が見つからないとしても、有休消化を認めない理由にはなりません。
この理由を認めてしまうと、いつまでも辞められないことになります。
対策としては引き継ぎ資料の作成を早めに進め、手順をマニュアル化するなどして自分にできることを進めておきましょう。
適切なタイミングでの引き継ぎと退職を目指しやすくなります。
関連記事:退職の引き止めは違法?しつこいときの対処法や法的根拠を解説
有休を申請したにもかかわらず、無断欠勤や欠勤扱いとされる悪質なトラブルがあります。
対策としては 口頭ではなく、メールやチャットなど記録が残る方法で有休申請を行いましょう。
こうすることで「有休申請は受け取っていない」と言われてしまうリスクを防げます。
明らかに不当な対応があった場合は、労働基準監督署への申し立ても検討しましょう。
有休を使い切らないまま退職日を迎えてしまうケースも少なくありません。
後悔しないためには、早めにスケジュールを立て、関係者と調整する姿勢が欠かせません。
有休消化を諦めるのではなく、どうすれば取得できるかを考えて積極的に行動しましょう。
関連記事:退職代行を利用すると即日退職できる?リスクやメリットについて解説
有休は消化できて当たり前のものなのですが、実際には退職までに消化しきれず、モヤモヤした気持ちを抱えてしまう方が多くいます。
ここでは、円満かつスムーズに有休を使って退職するために押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
何より重要といえるのが、早めの相談です。
予定日直前まで言い出せず、結果的に準備不足となるケースも見られます。
ですが、このような状況だと有休消化のスケジュール調整や引き継ぎがうまくいかず、有休を使えない原因となってしまいます。
具体的な退職予定日がまだ決まっていなかったとしても、退職を考える気持ちが固まった時点で一度信頼できる上司に相談することをおすすめします。
退職の意向と有休消化の希望を早めに共有することが、スムーズな調整につながります。
上司も、早い段階から相談を受けておくことで、余裕をもってスケジュール調整しやすくなります。
関連記事:退職の意思は何ヶ月前に伝えるべき?法律上のルールも紹介
有休を拒否されてしまう大きな理由として、周囲への影響が挙げられます。
特に重要な業務を任されている方の場合、長期で有休を消化すると周囲が対応できなくなってしまうこともあるでしょう。
このような業務への支障を抑えるためには、丁寧な引き継ぎを行うことが大切です。
有休を消化するタイミングとしては、引き継ぎ後に有休を消化してから辞める方法と、有休消化後に引き継ぎ作業を行う方法があります。
しっかりと引き継ぎを行ってからでなければ現場が混乱してしまう場合は、引き継ぎ後の有休消化を検討しましょう。
引き継ぎ資料は、受け取る側の視点でわかりやすく作成することが求められます。
担当者に直接説明をしたり、気軽に質問できる環境を作ったりして進めていきましょう。
有給休暇の取得は、労働者の当然の権利です。
本来、会社の許可がなくても取得できます。
上司から「休まれると困る」と言われても、諦める必要はありません。
円満に退職したい場合、強く主張するのが難しいこともありますが、必要に応じて、有給休暇が法律で保障された権利であることを明確に伝えましょう。
ただし、最初から「有休消化を拒否されるかもしれない」と考えて、相手が何も言っていないのに権利ばかり主張すると、相手の気分を害してしまうことがあります。
実際に拒否された場合に、法律上取得が認められていることを伝えるのが効果的です。
また、企業によっては有給休暇の買い取り制度がある場合もあるので、利用できる場合は検討してみましょう。
中には、どうしても有給休暇を認めてもらえないケースもあります。
しかし、有給休暇は労働者の権利であり、会社が不当にこれを拒否することはできません。
諦めずに、適切な対処法を考えましょう。
よくあるのが「人手が足りないので今は休めない」と言われるケースです。
退職日が決定している場合、時季変更権を行使して別日に振り替えることは原則としてできません。
したがって、退職時の有休消化については会社の時季変更権は使えません。
それでも会社が認めない場合は、 労働組合や労働基準監督署に相談しましょう。
具体的なアドバイスがもらえます。
また、会社にコンプライアンス部門や人事部、総務部があれば、そちらに相談するのも有効です。
場合によっては、弁護士への相談も検討しましょう。
会社との直接的なやり取りを避けながら、手続きを進めることも可能です。
関連記事:退職代行は労総組合に依頼すべき?違法リスクや弁護士との違いを解説
いかがだったでしょうか。
退職に伴う有給休暇について、よくあるトラブルや対処法を紹介しました。
有給休暇は、労働の対価として法的に認められた権利であり、適切な手続きを踏めば問題なく取得できます。
もし退職に関してトラブルが発生している場合は、退職代行ガーディアンにご連絡ください。
労働組合法に基づき、代理や交渉を正式に行える組織です。
人手不足の職場でも退職が可能です。
有休消化に関する悩みについても、相談を受け付けています。
この記事の監修者
長谷川 義人
東京労働経済組合
労働組合代表
プロフィール
高校を3ヶ月で中退しフリーターとなる。その後、20歳で定時制高校に通い25歳で定時制大学を卒業。
Tech系ITベンチャー企業にてBtoB営業からキャリアをスタートし、独立して代表として経営まで幅広く経験。
現在は「令和ならではの労働問題解決」に取り組むため、労働組合法人東京労働経済組合の代表に就任。
適法運営を徹底する退職代行サービス「退職代行ガーディアン」を運営し、日本の退職問題の改善と人材の最適配置を支える新たな社会インフラの確立に取り組む。
違法な退職代行が横行する業界の健全化にも力を入れており、労働者が安心して「次の一歩」を踏み出せる社会の実現を目指している。