公開日 2025.12.09 更新日 2026.01.22

パワハラで退職したいときにすべきこと4選!後悔しない事前準備とは

職場のパワハラによって精神的な限界を迎え、退職を余儀なくされる方は少なくありません。
これから退職意思を通知する予定の方は、衝動的に行動せず、計画的に準備することをおすすめします。
パワハラの証拠があれば、失業保険の受給が有利になるだけでなく、慰謝料や労災保険を請求できる可能性が高まるためです。

本記事では、パワハラの具体例や自己都合退職と会社都合退職の違い、事前準備の内容など、有利に退職するポイントを解説します。

パワハラによる退職理由は「自己都合」「会社都合」どちら?

退職理由には「自己都合退職」と「会社都合退職」の2種類があります。
両者の違いが明確に表れるポイントは、失業保険の受給条件です。

パワハラによる退職は、どちらの理由にも該当し得るため、以下の基礎知識をふまえて適切に対応しましょう。

  • 自己都合退職と会社都合退職の違い
  • パワハラが認められた場合は会社都合になる
  • 自己都合扱いを変更できるケースも

それぞれ解説します。

自己都合退職と会社都合退職の違い

会社都合退職は、リストラや倒産など、会社側の事情で離職するケースを指します。
労働者にとって、自己都合退職より会社都合退職のほうが圧倒的に有利です。

その理由の1つとして、以下のように失業手当の給付条件があげられます。

項目

会社都合退職

自己都合退職

受給開始時期

7日間の待期後

7日間の待期+1〜3ヶ月間の給付制限期間後

給付日数

最大240日(※1)

最大150日(※1)

国民健康保険料

軽減措置あり(※2)

原則として軽減措置なし(※2)

(※1)年齢や被保険者期間により変動
(※2)自治体の制度により異なる

会社都合退職と認定されれば、履歴書には「会社都合による退職」と記載できます。
労働者に責任はないと受け取られるため、社会的な信用を維持しやすいこともメリットです。

参考:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます
参考:基本手当の所定給付日数|ハローワークインターネットサービス

パワハラが認められた場合は会社都合になる

パワハラによって離職に追い込まれたことを証明できる場合は、原則として会社都合退職(特定受給資格者)と認定されます。
厚生労働省は、特定受給資格者の範囲として、以下を定めているためです。

上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者、事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者及び事業主が職場における妊娠、出産、育児休業、介護休業等に関する言動により労働者の就業環境が害されている事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者


引用:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス

パワハラによる退職を認めると、会社側の立場が危うくなるため、労働者に自己都合退職を迫るケースも珍しくありません。
しかし「会社都合」と「自己都合」の判断は、最終的にハローワークが下します。

自己都合扱いを変更できるケースも

自己都合退職として扱われても、実態がパワハラによる退職だと証明された場合は「会社都合」に変更できます。
変更の大まかな手順は、以下のとおりです。

  1. 退職後、できる限り早めにハローワークへ出向く
  2. パワハラの様子が記録された証拠を提出する(レコーダー・メール・診断書など)
  3. ハローワークが異議申し立ての内容を精査する
  4. パワハラの事実が認定されれば「自己都合」から「会社都合」に変更される

離職票に「自己都合」と記載されていても諦めず、まずは相談してみることが大切です。
客観的な証拠が揃っているほど「会社都合」への変更が認められやすくなります。

パワハラで退職した際に請求できるもの

パワハラで退職した際は、以下の金銭を受け取れる可能性があります。

  • 加害者や会社に対する損害賠償
  • 未払い賃金
  • 労災保険

それぞれ見ていきましょう。

加害者や会社に対する損害賠償

パワハラにより退職を余儀なくされた場合、加害者及び会社に対する慰謝料や損害賠償を請求できます。
会社は、職務執行中に行われた加害者の不法行為に対して使用者責任を負うためです。

たとえば、東京地方裁判所における平成22年7月27日の判決では、上司の以下の言動を「不法行為」と認定しています。

  • 「タバコ臭い」として寒い時期に扇風機の風をあて続ける
  • 弁明の機会を与えずに叱責し「今後同様のことがあった場合には、どのような処分を受けても⼀切異議はございません」という内容の始末書を提出させる
  • 会議において「お前はやる気がない」「明日から来なくてよい」などと怒鳴る
  • 「給料をもらっていながら仕事をしていませんでした」との念書を提出させるなど

本件では、被害者の治療費や休業損害、慰謝料として、会社及び加害者に計95万9,982円の支払いが命じられています。

慰謝料請求を認めてもらうためには「パワハラの事実」「精神的苦痛の発生」「退職」の3点の関連性を証明する必要があります。
音声やメール、写真など、客観的な証拠を集めておくことが大切です。

参考:消費者金融会社(パワハラ)事件|一般社団法人 女性労働協会

未払い賃金

パワハラが見過ごされている職場では、労務管理も不適切であるケースが少なくありません。
未払い賃金は退職後でも請求できるため、残業代などの受け取り漏れがないか確認しておきましょう。

請求できる未払い賃金の具体例は、以下のとおりです。

  • 毎月の給与
  • 賞与・ボーナス
  • 時間外労働や深夜労働の割増賃金
  • 退職金など

退職日までに支払われなかった賃金には、未払い額の年14.6%を乗じた金額が遅延利息として上乗せされます。
賃金請求権の消滅時効期間は3年間あるため、労働時間の記録をもとに請求しましょう。

なお、支給要件を満たしている場合は退職金も受け取れます。
5年で請求権の時効を迎えてしまうため、受給条件を満たしている場合は早めに請求することをおすすめします。

参考:賃金の支払の確保等に関する法律|e-Gov法令検索
参考:未払賃金が請求できる期間などが延長されています|厚生労働省

労災保険

パワハラによる心身の不調で医療機関を受診した場合は、労災保険を申請可能です。
精神障害の労災認定基準にパワハラが明示されたこともあり、労災申請の請求件数及び支給決定件数は増加傾向にあります。

精神障害の労災補償状況

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

請求件数

2,060

2,051

2,346

2,683

3,575

3,780

支給決定件数

509

608

629

710

883

1,055

認定率

32.1%

31.9%

32.2%

35.8%

34.2%

30.2%

労災認定された場合は、以下の補償を受けられる可能性があります。

  • 治療費の全額給付
  • 休業補償給付
  • 障害補償等一時金

労災を申請すると、労働基準監督署が会社の調査を行います。
会社が労災申請を拒否する場合でも、自分自身で申請できるため支障はありません。

参考:精神障害の労災認定基準に「パワーハラスメント」を明示します|厚生労働省
参考:過労死等に関する労災・公務災害の補償状況|厚生労働省

そもそもパワハラとは?定義や具体例を紹介

厚生労働省は、以下3つの要素をすべて満たす行為を「職場におけるパワーハラスメント」と定義しています。

  • 優越的な関係を背景とした言動である
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである
  • 労働者の就業環境が害されるものである

代表的な言動の類型は、以下の6つです。

類型

内容

身体的な攻撃

暴行や傷害など

精神的な攻撃

脅迫や侮辱など

人間関係からの切り離し

仲間外しや無視など

過大な要求

遂行不可能な業務の強制など

過小な要求

程度の低い仕事を命じることなど

個の侵害

私的なことに過度に立ち入ること

それぞれどのような言動が該当するのか、具体例を見ていきましょう。

参考:職場におけるハラスメント対策パンフレット|厚生労働省

身体的な攻撃(暴行や傷害など)

身体に直接的な攻撃を加え、相手に苦痛を与える行為です。
具体的には、以下のような行動が該当します。

  • 身体を叩く
  • 物を投げつける
  • わざとぶつかる
  • 胸ぐらを掴む
  • 物を蹴ったり叩いたりして威嚇する
  • 危険なものを振り回す

加害者側が「冗談のつもりだった」と主張しても、相手に苦痛を与えれば身体的な攻撃と認定されることがあります。
誤ってぶつかってしまった、手があたってしまったなど、不注意による行為はパワハラに該当しません。

精神的な攻撃(脅迫や侮辱など)

言葉や態度で人格を否定したり、尊厳を傷つけたりする行為です。
直接的な発言はもちろん、メールやチャットの送信内容も含まれます。

精神的な攻撃の内容は、以下のように多岐に渡ります。

パワハラに該当し得る言動

具体例

解雇を匂わす

  • 「さっさと辞めろ」
  • 「明日から来なくてよい」など

生命を危険にさらすことをほのめかす

  • 「殺すぞ」
  • 「死ね」など

相手を侮辱する

  • 「そんなこともできないのか」
  • 「無能」など

容姿や出自に対する差別

  • 「ダイエットしたらどうだ」
  • 「これだから片親は」
  • 「(外国人に向けて)○○人のくせに」など

経歴に関する差別

  • 「高卒のくせに生意気だ」
  • 「派遣だから使えないのか」など

権利を否定する

  • 「有給を取っている暇があったら働け」
  • 「仕事が終わっていないのだからサービス残業しろ」など

失敗を過度に責める

  • 「お前には二度と任せない」
  • 「みんなに土下座しろ」など

一方で、社会的ルールを欠いた問題行動が目立つ労働者に対して、一定程度強く注意することはパワハラに該当しません。

人間関係からの切り離し(仲間外しや無視など)

特定の労働者を意図的に孤立させる行為です。
学生同士で行われる「いじめ」と共通点が多く、組織ぐるみで行われるケースもあります。

切り離し行為の具体例は、以下のとおりです。

  • 忘新年会や懇親会に特定の労働者だけ誘わない
  • 挨拶を集団で無視する
  • 会議に参加させず、重要な情報を共有しない
  • 気に入らない労働者を隔離したり、在宅勤務させたりする

とくに「無視」は目に見えにくいため、目撃者の証言や防犯カメラ映像など、複数の証拠から総合的に証明する必要があります。

過大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制したり、仕事を妨害したりする行為です。
多くのケースで「精神的な攻撃」を伴っており、最悪の場合は過労死や過労自殺につながることもあります。

過大な要求の具体例は、以下のとおりです。

  • 十分な研修を行わないまま新入社員に重要プロジェクトを任せ、できなかったことを厳しく責める
  • 過酷な環境下で長時間にわたり、業務に関係のない作業を行わせる
  • 上司の私的な雑務処理を強要する
  • 目標を達成できなかった労働者に対し、無意味な反省文を大量に書かせる
  • 残業の上限を超えて労働しても到底終わらない量の業務を与える

教育のために少しレベルの高い業務を任せたり、繁忙期のみ一定程度多い業務を与えたりすることは、パワハラに該当しません。

過小な要求

合理性がないにもかかわらず、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えなかったりする行為です。
「人間関係からの切り離し」や、執拗な退職勧奨と同時に行われるケースもあります。

過小な要求には、以下のような行為が該当します。

  • コピーや清掃など誰でもできる業務しか与えず、ベテランの労働者を精神的に疲弊させる
  • 管理職候補であった労働者を専門外の部署に追いやり、やることがない状況を作り出す
  • 些細なミスをしたあと、適切な指導を行うことなく担当業務から外す
  • 意図的に仕事を与えずにプライドを傷つけ、退職に追い込む

労働者の能力に合わせ、業務の内容や量を調整することは問題ありません。
人格の否定や心理的な圧力がセットになると、パワハラに該当する可能性が高まります。

個の侵害

業務に関係のない私的なことに、過度に立ち入る行為を指します。
加害者に自覚がないことも多いため、人事担当者や社外の窓口に相談してみるのも1つの方法です。

「個の侵害」に該当する言動は、以下のとおりです。

  • 有給休暇の使い方を執拗に質問し、正当な理由なく取得を拒否する
  • 個人のSNSを日常的にチェックし、投稿内容に口出しする
  • 個人の私物を写真で撮影する
  • 本人の了承を得ずに「同性が好きらしい」「不妊治療をしているらしい」などとプライバシーを暴露する

労働者への配慮を目的に、個人的な事情や家族の状況などについてヒアリングすることは、パワハラに含まれません。
個人的な事情を問うことが必ずしも悪いわけではなく、不快に感じている相手に対して執拗に聞くことが問題となります。

パワハラで退職するまえにやるべきこと4選

パワハラによって退職に追い込まれそうなときは、退職後の生活を考慮して計画を立てましょう。
退職前にやるべきことは、以下の4つです。

  • 客観的な証拠を集める
  • 相談窓口に状況を報告する
  • 就業規則を確認しておく
  • 退職代行の利用を検討する

詳細を解説します。

客観的な証拠を集める

パワハラの証拠がなければ事実を証明することが難しく、正当な権利を主張できません。
以下のような証拠を、できる限り多く収集しておくことが大切です。

  • 音声データ
  • チャットやメールのやり取り履歴
  • 負傷箇所の写真
  • 日時や内容を記録した日記
  • 医師の診断書
  • 目撃者の証言

とくに音声やメール履歴など、客観的に事実を示すものは有力な証拠として扱われます。
データは削除されないよう、自分自身のパソコンやクラウドに保存しておきましょう。

相談窓口に状況を報告する

パワハラを受けたら、社内外の相談窓口に現状を報告しましょう。
相談の履歴が有力な証拠として扱われるためです。

代表的な相談窓口は、以下のとおりです。

  • 社内の人事部
  • 労働基準監督署
  • 総合労働相談コーナー
  • 労働組合
  • 弁護士など

弁護士への相談は料金が発生するため、まずは無料で利用できる窓口を活用するとよいでしょう。
相談内容は文書やメールなど、目に見える形で保存することをおすすめします。

就業規則を確認しておく

退職を通知するまえに、就業規則で退職規定を確認しておきましょう。
確認すべきポイントは、以下のとおりです。

  • 退職日の何日前までに退職意思を通知する必要があるか
  • 退職金規定はあるか、支給要件を満たしているか
  • 引継ぎが命じられているか

規定の内容を把握しておけば「退職金をもらい損ねた」「有給を消化しきれなかった」など、不都合が生じるリスクを軽減できます。
できる限り有利な条件で退職するためにも、計画的に準備を進めることが大切です。

退職代行の利用を検討する

パワハラが横行している職場では、退職意思を伝えても取り合ってもらえなかったり、嫌がらせが深刻化したりするおそれがあります。
現在の状況によっては、退職代行を利用することも1つの選択肢です。

ただし、パワハラのような法的トラブルを抱えているケースにおいて、民間企業による退職代行はおすすめできません。
会社側から何らかの反論があった場合でも、民間企業は交渉・協議を行えないためです。

労働組合や弁護士が運営する退職代行を利用すれば、合法的に退職条件を交渉してもらえます。
依頼先を慎重に選び、労働者としての利益を守りましょう。

関連記事:退職代行は弁護士提携だと安全?発生しがちな違法行為やデメリット

まとめ:パワハラが原因の退職は計画的な準備を

パワハラが原因で退職する際は、計画的な証拠集めが重要です。
会社側の主張に関係なく、パワハラが認定されれば「会社都合退職」として扱われ、失業保険の受給が優遇されます。
加害者や会社へ損害賠償を請求できる可能性もあるため、冷静に準備を整えましょう。

退職代行を利用すると、退職手続きのストレスを軽減できます。
退職代行ガーディアンでは、法適合の合同労働組合が退職手続きを代行し、安心・安全な退職を実現しています。
サービスに関する疑問や、パワハラに関する悩み事など、まずはお気軽にLINE無料相談をご利用ください。

この記事の監修者

長谷川 義人

東京労働経済組合
労働組合代表

プロフィール

高校を3ヶ月で中退しフリーターとなる。その後、20歳で定時制高校に通い25歳で定時制大学を卒業。
Tech系ITベンチャー企業にてBtoB営業からキャリアをスタートし、独立して代表として経営まで幅広く経験。
現在は「令和ならではの労働問題解決」に取り組むため、労働組合法人東京労働経済組合の代表に就任。
適法運営を徹底する退職代行サービス「退職代行ガーディアン」を運営し、日本の退職問題の改善と人材の最適配置を支える新たな社会インフラの確立に取り組む。
違法な退職代行が横行する業界の健全化にも力を入れており、労働者が安心して「次の一歩」を踏み出せる社会の実現を目指している。

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