
営利目的の民間企業が、実態の伴っていない労働組合を作り、退職代行を行っているケースが散見されます。
このような「偽装労働組合」によるサービスは違法性が高いため、厳重な警戒が必要です。
本記事では、退職代行における偽装労働組合の特徴や、見破り方をまとめました。
違法行為の具体例も紹介するため、安心・安全なサービスを選びたい方は参考にしてください。
退職代行とは、労働者の代わりに会社へ退職の意思を伝えるサービスのことです。
退職に関連する手続きや交渉は「法律的な問題」に該当します。
そのため、サービスとして提供できる内容には、運営元による違いがあります。
| 運営元 | 弁護士 | 労働組合 | 民間企業 |
| 退職意思の伝達 | ○ | ○ | ○ |
| 条件の交渉 | ○ | ○ | × |
| 残業代などの支払い要求 | ○ | ○ | × |
| 損害賠償請求 | ○ | × | × |
| 訴訟対応 | ○ | × | × |
ここでは、運営元ごとの業務範囲の違いを、法的根拠をもとに解説します。
弁護士または弁護士法人が運営している退職代行では、労働者の代理人として、あらゆる法律事務を代行可能です。
損害賠償請求や訴訟対応を業務として行えるのは、3つの形態の中で弁護士のみです。
法的な問題を抱えているケースや、会社が強硬な姿勢を貫くことが予想される場合には、弁護士による退職代行が適しています。
料金は、労働組合や民間企業による退職代行サービスと比較して高額な傾向にあります。
関連記事:退職代行は弁護士提携だと安全?発生しがちな違法行為やデメリット
労働組合による退職代行は、依頼者を労働組合員として受け入れ、組合の名義で会社と交渉する仕組みで運営されています。
労働組合には「団体交渉権」が認められているため、有給や未払い賃金などの条件交渉を合法的に行えることが特徴です。
団体交渉を要求された会社が、正当な理由なく拒否したり、不誠実な対応をしたりすることは「不当労働行為」にあたります。
そのため、労働組合による退職代行を利用すれば、依頼者の希望を会社側に伝えやすくなります。
ただし、労使関係以外の問題は交渉できず、訴訟の代理も務められない点を留意しておきましょう。
関連記事:退職代行は労働組合に依頼すべき?違法リスクや弁護士との違いを解説
民間企業は、サービスの一環として退職条件の調整や交渉を行うことが、法律上認められていません。
弁護士法72条では、無資格者が報酬目当てで法律事務に関与することを「非弁行為」として禁じているためです。
| 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。 |
「法律事務」には、労働者の代理人として会社と交渉することが含まれます。
そのため、民間企業が合法的に提供できる退職代行サービスは、労働者の意思をそのまま会社に伝えるだけの連絡に限られます。
たとえば、会社が労働者の望まない退職条件を提示してきた際に、異議を唱えて話し合いを行うことは許されません。
顧問弁護士がいる場合でも、このルールは変わらない点に注意しましょう。
以上の理由から、民間企業による退職代行は、弁護士法に抵触するリスクが比較的高い運営形態だといえます。
関連記事:非弁行為とは?弁護士法違反の行為を退職代行や保険会社の具体例で解説
関連記事:退職代行における非弁行為とは?違法業者の特徴や判断基準・判例を解説
労働組合が運営している退職代行は、合法的に会社と条件交渉を行えます。
しかし、労働組合が関与しているすべてのサービスが、適法だとは限りません。
ここでは、労働組合による退職代行サービスが違法となり得る事例を3つ紹介します。
それぞれ見ていきましょう。
営利目的の民間企業が、実態の伴っていない労働組合を作り、退職代行を行うケースです。
このような運営形態は「偽装労働組合」と呼ばれます。
偽装労働組合の実態は無資格業者であり、退職条件の交渉を行うことは「非弁行為」に該当します。
表面上は、団体交渉権にもとづいた正当な交渉を行っているように見えるため、厳重な警戒が必要です。
偽装労働組合には以下のような特徴があり、労働組合の成立要件を満たしていません。
悪質性の高いスキームであり、決して近づいてはならない業者だといえます。
民間企業が依頼者から代金を受け取り、交渉対応を労働組合に依頼することも違法行為になり得ます。
弁護士法では「法律事務の周旋を業とすること」も禁じているためです。
退職代行業者としての違法性を追及されている「退職代行モームリ」の運営実態が、この条件に当てはまります。
同社は、交渉が必要な場面になったら「提携している労働組合員が対応するため適法」だと主張しています。
しかし、依頼者から報酬を受け取っているのはモームリ(株式会社アルバトロス)です。
そのため、労働組合員に対応を依頼する行為は「周旋(仲介・紹介)を業としている」と判断せざるを得ません。
このような「斡旋スキーム」を組んでいる民間企業は多く、合法であると誤認しやすいため注意が必要です。
運営元が実態の伴った労働組合である場合、自衛官の退職代行を扱うことは自衛隊法に違反します。
自衛隊法第64条では、自衛官が労働組合に加入することを禁じているためです。
労働組合による退職代行は、依頼者を労働組合員として受け入れる仕組みで運営されています。
そのため、依頼者は服務規程違反にあたり、労働組合側も違法性を問われるおそれがあります。
その他の公務員においても、労働組合や民間企業による退職代行の利用はおすすめできません。
公務員は、行使できる労働三権や、退職規定が民間の会社員と異なるためです。
運営元が非弁護士にもかかわらず「公務員の退職を代行できる」と宣伝しているサービスには、一定の警戒が必要でしょう。
偽装労働組合による退職代行には、以下のような特徴があります。
詳細を見ていきましょう。
退職の現場では、7〜8割のケースで法律を根拠とした交渉が必要だといわれています。
とくに以下のような場面において、会社との話し合いは必要不可欠です。
偽装労働組合は、適法であることを装って、上記のような交渉を行います。
しかし、偽装労働組合の運営者は無資格であり、弁護士や法適合組合と比較すると十分な対応実績や専門知識を有していません。
そのため偽装労働組合による対応では、不利な退職条件を突きつけられた場合に覆せないおそれがあります。
最悪の場合、対応の過程で業者の違法性が露呈し、退職手続き自体が無効になることも考えられます。
退職代行サービスは、運営元によって費用相場が異なります。
| 運営元 | 費用相場 |
| 民間企業 | 1万5,000円〜5万円 |
| 労働組合 | 2万5,000円〜3万円 |
| 弁護士 | 5万円〜10万円 |
民間企業による適法な退職代行は、業務内容が大きく制限されるものの、費用を抑えられることがメリットになり得ます。
一方で偽装労働組合は、実態が伴っていないにもかかわらず、料金は法適合組合と同等レベルに設定しているケースが一般的です。
価格に見合ったサービスを受けられないため、費用を払う価値はありません。
弁護士資格のない者や、団体交渉権を持たない組織が、労働者の代わりに退職条件を交渉することは違法です。
偽装労働組合は、民間企業に交渉権限がないことを知っているからこそ、適法を装うために「労働組合運営」を自称しています。
純粋な民間企業の場合は、意図せず弁護士法に抵触してしまうこともあり得るでしょう。
しかし偽装労働組合は、弁護士法違反であることを承知のうえで交渉を代行しているため、極めて悪質であるといえます。
違法業者に依頼すると、依頼者自身が大きなリスクを負う可能性があります。
表面的な情報に惑わされず、運営元の実態を十分に見極めることが大切です。
ホームページの目立つ部分のみを確認しても、法適合組合と偽装労働組合の違いは分かりません。
偽りの労働組合を見破るポイントは、以下の2点です。
それぞれ見ていきましょう。
最初に、サービス提供元のホームページで運営者情報をチェックしましょう。
フッター(Webサイト下部の領域)メニューにある、以下のようなリンクで確認できます。
「労働組合運営」を謳っているにもかかわらず、運営者情報に「〜会社」が含まれている場合は、偽装の可能性が極めて高くなります。
なお、運営者情報を記載しているページが存在しない業者は論外です。
違法リスクが高いため、依頼は避けましょう。
ホームページ上の情報とあわせて、代金の支払い先も確認しておくことが大切です。
法適合の労働組合であれば、振込先の名義に「○○労働組合」「ロウクミ」「○○ユニオン」などが含まれています。
振込口座やクレジット決済の発行元が、株式会社や個人名義になっていたら危険です。
たとえば振込先が「カ)タイショクショウジ」のような名義の場合、組合運営のアピールは偽装だと判断しましょう。
労働組合になりすましている業者はもちろん違法ですが、労働組合との「提携」をアピールするサービスにも注意が必要です。
違法リスクが高い理由として、以下の2点があげられます。
詳細を見ていきましょう。
「労働組合が運営する退職代行」と「労働組合と提携している退職代行」は、似て非なるものです。
後者は、民間企業の担当者が業務を受注し、交渉が必要な場面で労働組合員に交替するという運営を行っています。
つまり、前述した退職代行モームリと同様の「斡旋スキーム」を組んでいる可能性があります。
民間企業による退職条件の交渉は、もちろん非弁行為です。
たとえ労働組合員が終始対応していたとしても、料金の支払い先や契約締結の相手が民間企業であれば、違法性を否定できません。
弁護士や労働組合との提携を謳う退職代行サービスが増加したことに対し、東京弁護士会は警告を発しています。
「非弁行為」と断定している具体的な事例は、以下のとおりです。
【事例2】
【解説】契約期間の途中での会社を辞めること(雇用契約の解約)や、パワハラを受けた場合の慰謝料などの損害賠償請求は、法律的な問題です。本事例では、業者は、本人から代金を受け取って、法律的な問題について話し合い(交渉)になったら、提携先の労働組合が行うとしています。しかしながら、お金を受け取って、法律的な問題の処理を他者(本事例では労働組合)へ斡旋することは、非弁行為です。 |
現在も複数の大手退職代行業者が、法的に問題のある運営を行っています。
退職代行を検討する際は、偽装労働組合や労働組合提携型のサービスに厳重な警戒が必要です。
偽装労働組合の正体は、労働組合に扮した無資格業者です。
退職代行を検討する際は、適法なサービスを選ぶための正しい知識を身につけましょう。
退職代行ガーディアンは、労働組合法人が運営する退職代行サービスです。
法適合組合による条件交渉で、依頼者の権利を守りながら安全な退職をサポートしています。
偽装労働組合の見分け方を知りたい方は、無料のLINE相談窓口をご利用ください。
25年を超える歴史の中で培ったノウハウをもとに、適切な対応策をご提案します。
この記事の監修者
長谷川 義人
東京労働経済組合
労働組合代表
プロフィール
高校を3ヶ月で中退しフリーターとなる。その後、20歳で定時制高校に通い25歳で定時制大学を卒業。
Tech系ITベンチャー企業にてBtoB営業からキャリアをスタートし、独立して代表として経営まで幅広く経験。
現在は「令和ならではの労働問題解決」に取り組むため、労働組合法人東京労働経済組合の代表に就任。
適法運営を徹底する退職代行サービス「退職代行ガーディアン」を運営し、日本の退職問題の改善と人材の最適配置を支える新たな社会インフラの確立に取り組む。
違法な退職代行が横行する業界の健全化にも力を入れており、労働者が安心して「次の一歩」を踏み出せる社会の実現を目指している。