公開日 2025.10.16 更新日 2026.01.21

退職代行における非弁行為とは?違法業者の特徴や判断基準・判例を解説

退職代行は、労働者に代わって会社に退職の意思を伝え、有給消化や未払い賃金請求などの条件交渉を行うサービスです。
しかし近年、退職代行は「弁護士法違反にあたるのではないか」と指摘されており、東京弁護士会も注意喚起を行っています。

本記事では、退職代行における非弁行為がどのようなものか、判断基準や判例とともに解説します。
違法業者の特徴もまとめているため、適法なサービスを見分けたい方は参考にしてください。

退職代行における非弁行為とは?

非弁行為とは、弁護士にしか認められていない行為を、無資格者が報酬目的で行うことです。

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

引用:弁護士法第72条|e-Gov法令検索

退職代行サービスにおいて、会社との条件交渉は「法律事務」にあたり、無資格者が行うと弁護士法に違反する可能性があります。
以下のような問題の交渉には、多くのケースで法律が絡むためです。

  • 退職日の調整
  • 有給残日数の消化・請求
  • 退職金や残業代の請求など

労働者の退職意思を、そのまま会社に伝達するだけであれば法律行為にあたらないため、弁護士法違反を免れる余地があります。
しかし退職の現場では、7〜8割のケースで法律を根拠とした交渉が必要とされており、単なる意思伝達では手続きが成立しません。

そのため無資格業者による退職代行は、弁護士法に抵触する危険と隣り合わせな状況だといえます。

非弁行為の詳細は、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:非弁行為とは?弁護士法違反の行為を退職代行や保険会社の具体例で解説

退職代行に非弁行為が含まれる事例

退職代行サービスの提供元は「弁護士」「労働組合」「民間企業」の3種類に大別されます。
これらの形態の中で非弁行為が発生し得るのは、おもに民間企業による退職代行です。

民間企業による退職代行において、以下のような対応は非弁行為に該当します。

  • 事例1. 退職の意思を伝え、会社と残業代について話し合う
  • 事例2. 金銭を受け取り、問題の処理を労働組合へ依頼する

具体的なシーンをもとに詳細を解説します。

事例1. 退職の意思を伝え、会社と残業代について話し合う

退職代行が非弁行為に該当する典型的な事例は、以下のとおりです。

  • 本人の要望は、会社を辞めること、及びこれまで支払われていない残業代の請求であった。
  • 業者は、本人に代わって、会社に対して伝えたところ、会社側は「もう辞めるのだから、残業代なんか支払わない。」と主張した。
  • 業者は残業代について「それは法律に違反する。」「私が計算したところ●円になる。」などと説明し、会社との話し合いの結果、残業代が支払われることになった。

引用:退職代行サービスと弁護士法違反|東京弁護士会

残業代を受け取ることは、労働基準法で定められた労働者の権利です。
そのため、残業代の有無や金額の算定は、法律的な問題だといえます。

本事例は、弁護士でない者(民間企業の担当者)が、労働者の代わりに法的な話し合いを行っているため、非弁行為に該当します。

関連記事:退職の意思は何ヶ月前に伝えるべき?法律上のルールも紹介

事例2. 金銭を受け取り、問題の処理を労働組合へ依頼する

民間企業の中には「交渉が必要な場面では、団体交渉権を持つ労働組合に交替するため違法ではない」と主張する業者もいます。
しかし、以下のような行為は弁護士法違反です。

  • 本人の要望は、契約期間の途中で会社を辞めること、及び在職中に受けたパワハラの慰謝料を請求することであった。
  • 業者は、労働組合と提携しており、法律的な問題について話し合い(交渉)になったら、提携先の労働組合が行うとしていた。本人は、業者に代金を支払って、依頼した。
  • 業者は、本人に代わって、会社に対して伝えたところ、会社側は「パワハラなんかしていない。」と主張した。
  • 業者は、労働組合と交代し、労働組合が話し合いを行った結果、会社はパワハラを認め、慰謝料が支払われることになった。

引用:退職代行サービスと弁護士法違反|東京弁護士会

本事例において、問題の処理を他者に依頼した業者の対応は、非弁行為に該当します。
弁護士法では、無資格者本人が法的な問題を扱うことだけでなく「法律事務の周旋を業務として行うこと」も禁止しているためです。

【実例】違法な退職代行業者の3タイプ

退職代行サービスが誕生して以降、業界には多くの無資格業者が、法の隙間を突いて参入しています。
現在では、おもに以下3タイプの違法業者が存在しているため、厳重な警戒が必要です。

  • 弁護士資格を持たずに代理交渉を行う業者
  • 「提携弁護士」や「労働組合」を利用する業者
  • 労働組合を偽った無資格業者

詳細を見ていきましょう。

弁護士資格を持たずに代理交渉を行う業者

「弁護士監修」を謳っていながら、実際には民間企業が主体となり、会社との交渉を代行する業者です。
適法であるかのように装って利用者を誤認させるスキームであり、れっきとした非弁行為に該当します。
たとえ弁護士が関与していたとしても、弁護士自身が案件を処理しない限り、法律違反は免れません。

退職代行は2018年頃に商業化が進んだ歴史の浅いサービスであり、実務に精通した専門家が少ない傾向にあります。
業界の黎明期は、取締りが不十分なことを利用した無資格業者が横行し、違法な退職代行サービスが数多く存在していました。

2020年以降は退職代行に関する法的対策が進み、堂々と交渉対応を行う業者は減少しています。

関連記事:非弁行為とは?弁護士法違反の行為を退職代行や保険会社の具体例で解説

「提携弁護士」や「労働組合」を利用する業者

無資格の業者が、弁護士や労働組合に交渉対応を斡旋しているケースです。
業者が交渉対応を行わないため「合法」だと錯覚しやすいものの、実態は弁護士や労働組合の名前を利用しているに過ぎません。

依頼者から金銭を受け取り、問題の処理を弁護士や労働組合に依頼することは、非弁行為に該当します。
弁護士や労働組合が交渉を担っていたとしても、契約相手や振込先が民間企業である以上、法律違反を否定できません。

このような「斡旋スキーム」を組んでいる違法業者は、2025年現在も存在します。
東京弁護士会も公式に注意喚起を行っており、厳重な警戒が必要です。

関連記事:退職代行は弁護士提携だと安全?発生しがちな違法行為やデメリット

労働組合を偽った無資格業者

実際には労働組合でない民間企業が「偽装労働組合」を作り、退職代行を行うケースです。

法適合の労働組合には「団体交渉権」が認められているため、合法的に会社と条件交渉を行えます。
一方、偽装労働組合の実態は無資格業者であり、交渉権限を有していません。

適法であることを装うために「労働組合運営」を自称し、利用者を欺いている事例です。
弁護士法に抵触することを承知のうえで交渉を代行しているため、極めて悪質性が高いといえます。

以下の条件に当てはまる退職代行サービスは、偽装労働組合の可能性があります。

  • 労働者の権利擁護活動をしておらず、営利が主目的となっている
  • 実質的に民間企業が運営している
  • 組合の規約が定められていない

「労働組合運営」を謳っているにもかかわらず、運営者が民間企業名義の退職代行には注意が必要です。

関連記事:退職代行における偽装労働組合とは?事件屋の特徴や見破る方法を解説

適法な退職代行サービスを見極めるポイント

違法業者による退職代行を利用すると、依頼者自身が大きな不利益を被ります。
違法業者からの連絡には一切応じない会社もあり、退職が失敗に終わる可能性が高いためです。

適法な退職代行サービスを選ぶために、以下を事前に確認しましょう。

  • 運営元の情報を確認する
  • 提供サービスの範囲をチェックする
  • 料金体系が明確なサービスを選ぶ

それぞれ解説します。

運営元の情報を確認する

運営元が「弁護士」または「労働組合」の退職代行サービスを選べば、違法行為に巻き込まれるリスクを大きく軽減できます。
弁護士や労働組合は、労働者の正式な代理人として条件交渉を行えるためです。

ただし、弁護士や労働組合との提携を謳いながら、実態として名義を借りているに過ぎないケースもあります。
依頼前に以下を確認しておけば、弁護士や労働組合を隠れ蓑にした違法業者を見極められるでしょう。

  • 顧問弁護士がいる場合、弁護士情報が弁護士会のホームページに登録されているか
  • 労働組合運営を自称している場合、運営者情報に「株式会社」や「合同会社」などが入っていないか
  • 支払い先が弁護士または労働組合名義になっているか

トラブルなく退職したい場合は、弁護士や法適合組合が運営しているサービスを選ぶのが安全です。

提供サービスの範囲をチェックする

退職代行の業務内容は、サービスを運営している主体によって異なります。
以下に、おもな業務範囲の違いをまとめます。

運営元弁護士労働組合民間企業
退職意思の伝達
退職条件の交渉×
残業代などの支払い要求×
損害賠償請求××
訴訟対応××

民間企業が法律の範囲内で行える行為は、退職意思の伝達のみです。
以下のような事項がホームページ上で明記されていれば、比較的安心できるでしょう。

  • 労働者の「退職意思の伝達」のみを請け負う
  • 交渉や請求、訴訟などの対応は一切行わない

「退職金を請求できる」「有利な条件で退職できる」などと宣伝している民間企業は、弁護士法に違反しているおそれがあります。

料金体系が明確なサービスを選ぶ

ホームページや利用規約に、返金対応やキャンセル代、追加費用の有無が明示されていることを確認しましょう。
料金体系が不明確な退職代行サービスは、利用を避けるのが賢明です。

実際に、悪質な業者による以下のようなトラブル事例が報告されています。

  • 退職に失敗したにもかかわらず、返金されない
  • 先払いで料金を支払った途端、連絡が途絶える
  • 無料相談を受けて契約しなかったら、キャンセル代を請求された

「追加料金なし」と明記されていない場合は、想定外の追加料金がかかるおそれもあります。
一律料金のサービスを選べば「費用が足りずに追加対応を依頼できなかった」という事態を防げるでしょう。

関連記事:退職代行の弁護士費用相場は?料金の内訳やメリット・デメリット

関連記事:退職代行の平均金額はいくら?相場や雇用形態別の費用目安を解説

退職代行の非弁行為にまつわる判例

退職代行サービスが違法かどうかを考える際には【令元(ワ)20335号 東京地方裁判所 令和2年2月3日判決】が参考になります。
無資格業者による退職代行が、非弁行為に該当するか否かについて争われました。

裁判の概要は、以下のとおりです。

  • 依頼者は退職代行業者の非弁行為を主張
  • 裁判所は業者の弁護士法違反を否定
  • 非弁行為に該当するには一定程度の法的事件性が必要
  • 依頼者が業者の違法性を判断するのは難しい

詳細を見ていきましょう。

依頼者は退職代行業者の非弁行為を主張

原告(X)は、退職代行業者である被告(Y)に5万円を支払い、退職の意思表示の代行を依頼しました。
Yが、会社にXの退職意思を伝えたところ、会社から「Xとの契約は、雇用契約ではなく業務委託契約である」と返答されました。

そこでYは、Xに以下のような趣旨のメールを送っています。

  • 会社とXの間で認識の相違がある状態では、弊社から会社へ電話はできない
  • 情報の確認が取れるまで、退職代行業務を中断する

結局Xは、弁護士に交渉を依頼して会社を退職しました。

のちにXは「Yの行為は弁護士法72条に違反するから、本件契約は無効である」と主張し、報酬5万円の返還を請求。
また、Yの不法行為によって精神的苦痛を被ったとして、慰謝料50万円を請求しました。

裁判所は業者の弁護士法違反を否定

裁判所は、XとYが契約を締結したこと、及びYの行為は弁護士法第72条には違反しないと結論づけています。
そのため、報酬5万円の返還と、慰謝料50万円の請求は認められませんでした。

さらに裁判所は、本件において以下の事実を認定しています。

  • 退職代行業者は、会社側から雇用契約の回答を得た段階(法的紛議に発展したといえる段階)で業務を中止していた
  • それ以降は会社との交渉などを一切行っていなかった
  • 本件の退職代行では「退職意思の伝達」と「付随的な連絡(私物の郵送依頼や離職票の送付依頼など)」が契約内容となっていた

これらの事実が、最終的な法的判断の根拠となります。

非弁行為に該当するには一定程度の法的事件性が必要

裁判所は、本件が非弁行為に該当するか否かに関して、以下のような判断を示しています。

法的紛議が顕在化している必要まではないが、紛議が生じる抽象的なおそれや可能性があるというだけでは足りず、当該事案において、法的紛議が生じることがほぼ不可避であるといえるような事実関係が存在することが必要であると解するのが相当である

つまり、退職代行業者が会社に退職意思を伝える時点での該非判定は、以下のように解釈できます。

非弁行為に該当する非弁行為に該当しない
  • 法的紛議が顕在化している状況にある</li>
  • 法的紛議を避けられない事実関係がある
紛議が生じる抽象的なおそれや可能性がある

非弁行為の成立要件として、ある程度の事件性が求められていることが分かります。

依頼者が業者の違法性を判断するのは難しい

業者が会社に連絡した時点では「法的紛議が生じることがほぼ不可避である」といえる事実が存在していません。
さらに、法的紛議に発展した(会社から一次回答があった)時点で、業者はすぐに業務を中断しています。

以上の理由から、裁判所は退職代行業者の対応を「非弁行為」と認定しませんでした。
私物の郵送依頼や離職票の送付依頼などを業者が代行しても、非弁行為にはあたらないと判断されている点も特徴的です。

退職代行サービスは歴史が浅く、蓄積されている判例が限られます。
ケース別の事実関係をもとに評議されるため、業者の適法性を自力で判断するのは難しいでしょう。

退職代行が必要になったときは、労働組合や弁護士が運営しているサービスを利用し、リスクの軽減を図ることが大切です。

まとめ:退職代行は法適合組合への依頼がおすすめ

退職代行サービスの利用者増加に伴い、違法業者によるトラブルが増加しています。
退職後に安心して新たな一歩を踏み出すためには、適法な退職代行サービスを選ぶことが重要です。

退職代行ガーディアンは、労働組合法人「東京労働経済組合」が運営する適法な退職代行サービスです。
労働組合法にもとづいた条件交渉で、依頼者の権利を守りながら安全な退職をサポートしています。

当組合では、退職代行に関する以下のような悩み・疑問を解決すべく、LINE相談窓口を設置しました。

  • 検討しているサービスが違法かどうかが分からない
  • 適法な退職代行の見分け方を知りたい
  • 違法業者を利用してしまった

専門スタッフが、適法かつ安全な退職の方法を案内するため、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

長谷川 義人

東京労働経済組合
労働組合代表

プロフィール

高校を3ヶ月で中退しフリーターとなる。その後、20歳で定時制高校に通い25歳で定時制大学を卒業。
Tech系ITベンチャー企業にてBtoB営業からキャリアをスタートし、独立して代表として経営まで幅広く経験。
現在は「令和ならではの労働問題解決」に取り組むため、労働組合法人東京労働経済組合の代表に就任。
適法運営を徹底する退職代行サービス「退職代行ガーディアン」を運営し、日本の退職問題の改善と人材の最適配置を支える新たな社会インフラの確立に取り組む。
違法な退職代行が横行する業界の健全化にも力を入れており、労働者が安心して「次の一歩」を踏み出せる社会の実現を目指している。

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