
退職を希望している方や、会社から退職を求められている方に向けて、企業側責任と自己都合退職の違いや注意点を解説します。
退職の際に「労働者側責任と企業側責任のどちらの退職のほうが有利?」と悩む方は少なくありません。また「企業側責任として早く失業給付金を受け取りたい」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
ただし、労働者側責任にも一定のメリットがあります。
今回の記事では企業側責任と自己都合退職の両方について、メリットとデメリットを解説します。
参考にしていただければ、ご自身にとってより有利な、正しい退職の仕方についてご理解いただけるはずです。
まず「企業側責任」とは、次のような条件を満たすケースです。
【企業側責任となる条件[1]】
基本的に「 労働者が希望していないにもかかわらず、会社の都合によって退職となるケース」が会社都合の退職となります。
会社が倒産したりリストラをしたりするケースが代表的でしょう。
また、希望退職によって会社を辞めた場合も、企業側責任の退職とされます。
派遣社員や契約社員として働いていて、労働契約が終了した場合も同様です。
このように、会社側の都合で退職となることが企業側責任の条件です。
それでは続いて「自己都合退職」とされるのはどのようなケースであるか見ていきましょう。
【労働者側責任退職となる条件】
主に労働者のライフスタイルの変化に伴う退職であれば、自己都合退職とされるでしょう。
結婚や妊娠・出産、育児は代表的な例です。
両親の介護を理由に退職するケースもあります。
また、転職や懲戒処分による退職も、労働者側責任に該当します。
会社から免職・解雇されたとしても、懲戒処分であれば労働者側責任退職となります。
関連記事:退職届の書き方は?トラブルを避けるポイントと提出タイミングも確認
退職する理由は人それぞれですが、企業側責任による退職にはメリットがあります。
労働者側責任退職よりも、企業側責任のほうが労働者にとってのメリットは大きいので、事前に確認しておきたいものです。
それではどのようなメリットがあるのか、3つの観点から見ていきましょう。
まず、失業手当を早くかつ多く受け取れる点がメリットです。
企業側責任で退職した場合と、自己都合で退職した場合の失業手当の違いは次のとおりです[2]。
| 企業側責任 | 自己都合退職 | |
| 支給開始 | 申込みから7日後 | 申込みから7日+1~3ヶ月後 |
| 受給期間 | 離職翌日から最大1年間 | |
会社都合の退職であれば、ハローワークに求職申込みをした7日後から失業手当を受け取れます。
しかし労働者側責任退職の場合は、申込みから7日を経た後、1~3ヶ月の待機期間が設けられるため受給が遅くなるシステムです。
企業側責任でも自己都合退職でも、受給できる期間は「 離職翌日から最大1年間」です。
つまり企業側責任のほうが最大受給期間が1~3ヶ月長くなり、そのため、受給額が増えるというメリットがあります。
関連記事:退職後に失業保険を受け取るには?必要な手続きや流れを解説
解雇予告手当を受け取れる可能性も、企業側責任のメリットのひとつです。
解雇予告手当とは、会社が30日以上前に解雇の予告をしなかった場合に、支払いを義務付けられている手当のことです[3]。
労働基準法第20条には次のように記載されています。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
会社側が30日以上前に解雇を予告しなかった場合は、30日分以上の平均賃金の支払いが義務づけられています。
たとえば、20日前に解雇通告があった場合は、不足する10日分の平均賃金の支払いが必要です。
もちろん30日以上前に解雇予告があった場合は、手当受給の対象からは外れます。
しかし突然の解雇予告であった場合、解雇予告手当を受け取れることはメリットであると言えるでしょう。
企業側責任の場合、退職届の作成が不要となります。
労働者側責任の場合、どうしても退職届を作成し、提出しなければならない手間が生じるはずです。
しかし会社の都合にて退職となるのであれば、退職届を作成する必要もなく、提出時の心理的負担も軽減されます。
そのため手間なくシンプルに退職できるところもメリットのひとつです。
企業側責任による退職は、転職活動で不利になる可能性があります。
履歴書に「会社都合による退職」と記載されていた場合、面接官は「以前の勤務先で何か問題があったのでは?」と考えることもあるでしょう。
懲戒処分や退職勧奨を受けた可能性を疑われることがあります。
懲戒処分をされた人材、勤務態度や人間関係に何か問題があった人材だと思われると、転職活動において不利になることもあるでしょう。
もちろん企業の倒産や整理解雇が理由であれば問題ありません。
会社都合による退職理由に対して、警戒する面接官もいる点には注意が必要です。
企業側責任には多くの利点がありますが、自己都合退職にも見逃せないメリットがあります。
労働者側責任で退職することにはどのようなメリットがあるのか解説していきます。
自己都合退職であれば、転職活動時に退職理由を深く追及されにくい傾向があります。
転職は一般的な選択肢であり、自己都合退職を選ぶ人も少なくありません。
企業側責任であれば、何らかの問題があって退職となったのではないかと勘ぐられることがあるでしょう。
一方、自己都合退職であれば、問題視されることはほとんどありません。
退職理由を深く追及されにくいため、面接がスムーズに進みやすい点は大きな利点です。
面接においてポジティブな印象を与えられることもメリットのひとつです。
労働者側責任での退職にはさまざまな可能性が考えられます。
より良い待遇の企業に転職したいと思う方もいるでしょうし、スキルアップを求めて転職する方もいるでしょう。
転職理由がネガティブな場合でも、伝え方によっては前向きな印象を与えることが可能です。
会社都合での退職の場合、理由によってはポジティブにはなり得ないこともあります。
労働者側責任による退職であれば、面接官に余計な不安を与えることなく、スムーズに選考が進む傾向があります。
それでは次に、自己都合退職のデメリットについて見ていきましょう。
企業側責任にデメリットがあるように、自己都合退職にも次のような不利な点があります。
まずは退職金を減らされる可能性があることについてです。
会社の規定によっては、自己都合退職の場合に退職金が減額されることがあります。
退職金は「会社への貢献度を退職の際に金銭で支払う」と考えている会社もあります。
会社都合であれば満額支給される一方、労働者側責任では「貢献度が低い」と判断され、退職金が減額される可能性があります。
実際に数百万円の差が出るケースも報告されています。
退職金は退職後の生活を支える大切なお金。
退職前に、自社の退職金規定を必ず確認しておきましょう。
関連記事:退職給付金とは?種類や申請方法・受け取り方まで詳しく確認
失業給付金の給付制限を設けられることもデメリットのひとつであると言えます。
先に解説したように、失業給付金は企業側責任であれば、申込みから7日後にすぐ受け取れるルールです。
しかし 労働者側責任での退職の場合は、1~3ヶ月間の待機期間が設けられます。
退職後は収入が途絶えるため、失業給付金に頼らざるを得ない場合もあります。
この待機期間中は、収入が一切ない状態となるため、生活が不安定になるリスクもあります。
次のような場合は労働者側責任での退職を企業側責任にできます。
【自己都合退職を企業側責任にできるケース(特定受給資格者)[4]】
以上の条件に該当した場合、「特定受給資格者」とされ、自己都合で退職した場合でも、企業側責任として扱われることがあります。
さらに次に該当する場合は「特定理由離職者」となり、特定受給資格者と同じく会社都合の退職となります。
【自己都合退職を企業側責任にできるケース(特定理由離職者)[4]】
該当する条件を満たす場合、企業側責任となり、失業給付金を早期に受給できる可能性があります。
ただし、細かな条件も設定されているため、該当する可能性がある場合は、最寄りのハローワークへ確認することをおすすめします。
企業側責任を労働者側責任での退職にしてほしいと言われることがありますが、もし実態にそぐわず、自己都合退職を希望しないなら拒否する意思を明確に伝えましょう。
すでに自己都合で退職していた場合でも、 企業側責任である証拠があれば、申請時に考慮される可能性があります。
ハローワーク申請時に提出してください。
実態のない労働者側責任での退職となったなら、状況によっては、弁護士や退職代行サービスへの相談を検討しましょう。
関連記事:退職代行は弁護士提携だと安心?発生しがちな違法行為やデメリット
いかがでしたでしょうか?
本記事では、企業側責任と自己都合退職の違いや特徴について解説しました。
企業側責任による退職は、退職金の減額が避けられ、失業給付金も多く受給できるなど、金銭面でのメリットが大きい傾向があります。
わたくしども「退職代行ガーディアン」は、労働組合であるため法的権利を行使できます。
コストも抑えられているため、退職に関するお悩みがある方はぜひご相談ください。
[1]参照:厚生労働省:(PDF)第5章 仕事を辞めるとき、辞めさせられるとき
[2]参照:厚生労働省:(PDF)離職されたみなさまへ
[3]参照:厚生労働省:(PDF)解雇には30日以上前の予告が必要です
[4]参照:厚生労働省:(PDF)特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準
この記事の監修者
長谷川 義人
東京労働経済組合
労働組合代表
プロフィール
高校を3ヶ月で中退しフリーターとなる。その後、20歳で定時制高校に通い25歳で定時制大学を卒業。
Tech系ITベンチャー企業にてBtoB営業からキャリアをスタートし、独立して代表として経営まで幅広く経験。
現在は「令和ならではの労働問題解決」に取り組むため、労働組合法人東京労働経済組合の代表に就任。
適法運営を徹底する退職代行サービス「退職代行ガーディアン」を運営し、日本の退職問題の改善と人材の最適配置を支える新たな社会インフラの確立に取り組む。
違法な退職代行が横行する業界の健全化にも力を入れており、労働者が安心して「次の一歩」を踏み出せる社会の実現を目指している。