
退職代行の利用を検討している中で、退職金の不支給や減額に不安を感じる方は少なくありません。
会社に退職金制度があり、支給要件を満たしていれば、退職代行を利用しても退職金を受け取れます。
しかし、会社が不当な理由で支払いを拒否する場合は、交渉権限のある代行業者でなければ請求が困難です。
本記事では、退職代行を利用して退職金を受け取る際の注意点や、トラブルを回避する業者選びのポイントを紹介します。
有給休暇の請求についてもまとめていますので、有利な条件で退職したい方は参考にしてください。
退職代行サービスを使って退職しても、退職金は通常どおり受け取れます。
退職代行の利用と退職金の支給には、一切因果関係がないためです。
ただし、中には以下のような理由をもとに、退職金の支払いを拒否する会社も存在します。
上記のうち、正当な理由だと判断され得るのは「4」と「5」のみです。
それ以外の理由で退職金の支払いを拒否された場合は、正しい手順で請求すれば回収できる可能性があります。
退職金は、どのような方でも無条件に受け取れるわけではありません。
とくに退職代行利用時は、以下の注意点を押さえておきましょう。
詳細を解説します。
退職金制度を設けるか否かは、会社側が自由に決められます。
労働基準法では、退職金の支給義務が明文化されていないためです。
したがって、そもそも退職金規程が存在しない会社では、退職金を受け取れません。
厚生労働省の調査によると、退職給付(一時金・年金)制度を設けている企業の割合は74.9%であることが明かされています。
以下のとおり、企業規模が小さくなるほど、退職給付制度が未整備の企業割合が増加します。
|
企業規模 |
退職給付(一時金・年金)制度がない企業の割合 |
|---|---|
|
1,000人以上 |
8.8% |
|
300~999人 |
11.1% |
|
100~299人 |
15.1% |
|
30~99人 |
29.5% |
会社の規模が小さい場合は、制度自体の有無をとくに気にかける必要があるでしょう。
退職金制度が存在していても、会社が定める支給要件を満たしていなければ、退職金を受け取れません。
詳細は就業規則によって定められているため、以下の項目を事前に確認しておきましょう。
中でも重要なのが、退職金の受給に必要な勤続年数です。
東京都内の中小企業を対象とした調査では、最低勤続年数を「3年」と定める事業所が最多であると判明しています。
|
最低勤続年数 |
回答した企業の割合 | |
|
自己都合退職 |
会社都合退職 | |
|
1年未満 |
0.3% |
8.4% |
|
1年 |
14.2% |
19.7% |
|
2年 |
11.6% |
8.1% |
|
3年 |
47.3% |
34.4% |
|
4年 |
3.3% |
2.3% |
|
5年以上 |
11.4% |
8.4% |
|
無回答 |
11.9% |
18.7% |
退職金の計算方法もあわせて確認すれば、勤続年数に応じた受給金額の目安も把握できます。
参考:中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)|東京都産業労働局
退職金制度があり、支給要件を満たしているにもかかわらず、退職金の支給を拒否する会社も存在します。
不当な理由で拒否された場合は、会社と法律にもとづいて交渉する必要があります。
退職金に関する交渉は「法律事務」に該当するため、民間企業が運営する退職代行では対応できません。
退職金の受給権を失わないように、会社と対等に協議できるサービスを選びましょう。
退職代行サービスを提供している組織には、大きく以下3つの運営形態があります。
詳しく見ていきましょう。
弁護士または弁護士法人が運営している退職代行サービスを利用すれば、退職金の請求に関して法的なサポートを受けられます。
弁護士は法律のプロであり、あらゆる法律事務の独占が認められているためです。
退職代行で依頼できる業務の具体例は、以下のとおりです。
損害賠償請求や訴訟代理が認められているのは、弁護士による退職代行サービスのみです。
退職金を巡るトラブルが予想される場合は、弁護士への依頼を検討しましょう。
ただし、料金は労働組合や民間企業による退職代行と比較して、高額な傾向にあります。
労働組合による退職代行は、退職希望者を組合員として受け入れ、組合名義で会社と交渉を行う仕組みです。
労働組合法に適合した団体には「団体交渉権」が認められるため、合法的に会社と交渉できます。
会社側は、労働組合からの団体交渉に対し、誠実に対応しなければなりません。
交渉を正当な理由なく拒否したり、労働者に不利益を与えたりすることは「不当労働行為」に該当するためです。
したがって、労働組合が運営する退職代行を利用すれば、労働者の権利を最大限に行使できます。
ただし、損害賠償請求や訴訟代理は依頼できません。
法的紛争が予見される場合は、弁護士へ依頼することも検討しましょう。
民間企業による退職代行は、法的な制限が大きい運営形態です。
違法性なく対応できる業務は「退職意思の通知」に限定されます。
退職金を請求するケースを想定し、民間企業が提供できるサービスの具体例を見てみましょう。
|
業務の具体例 |
対応可否 |
|
労働者の「退職金を受け取りたい」という意思を伝える |
○ |
|
会社が退職金の支払いを拒否した場合に反論する |
× |
|
就業規則を根拠に、労働者の「退職金を受け取る権利」を主張する |
× |
労働者の要望がすべて受け入れられる場合は問題ありませんが、会社から反論されれば一切のアクションを起こせなくなります。
本来請求可能な退職金を受け取れなくなるリスクがあるため、会社が強硬な姿勢を示しそうな場合にはおすすめできません。
労働組合や弁護士が運営する退職代行は、民間企業と比較して安全・安心な退職を実現しやすい傾向にあります。
具体的なメリットは、以下のとおりです。
それぞれ見ていきましょう。
民間企業による退職代行は、ほかのサービスと比較して違法リスクが高い運営形態だといえます。
業者に意図があるか否かにかかわらず、退職代行業務の内容が弁護士法に抵触しやすいためです。
たとえば、民間企業が以下のような対応を行うと、違法性を問われる危険があります。
労働組合や弁護士が運営するサービスでは、このような対応を合法的に行えます。
退職代行の現場で発生しやすい問題の大部分をカバーできるため、結果的に違法リスクが低減するでしょう。
関連記事:退職代行は違法なのか?ケース別の判断基準や業界の問題点を解説
民間企業による退職代行では「結局退職できず、自分で会社とやり取りせざるを得なくなった」といった事例も見られます。
退職が失敗に至るおもな理由は、以下のとおりです。
労働組合や弁護士による退職代行を利用すれば、上記のようなリスクを回避しやすくなり、結果的に退職の成功確率が上がります。
サービス料金だけでなく、長期的な費用対効果も考慮して依頼先を検討しましょう。
有給休暇の取得は労働者の権利であり、退職時に残日数をすべて消化することが認められています。
退職代行を利用した場合でも、退職金と同様に有給休暇も請求可能です。
ただし、すべてのケースで有給を消化できるとは限りません。
有給を取得できない代表例は、以下のとおりです。
それぞれ見ていきましょう。
退職時に残っている有給の日数が「ゼロ」の場合は、当然ながら有給消化が認められません。
たとえば実質的な即日退職を希望したとき、有給の残日数がある場合とない場合では、以下のような違いが生じます。
|
有給の残日数 |
退職スケジュール |
給与への影響 |
|
あり |
<ul>
</ul> |
11月分の給与を満額受け取れる |
|
なし |
<ul>
</ul> |
欠勤日数に応じた金額が11月分の給与から控除される |
なお、残日数があっても期限切れの有給休暇は取得できません。
給与明細などを確認し、残日数と有効期限を把握しておきましょう。
退職予定日をあらかじめ定めている場合は、有給を消化しきれない可能性もあるでしょう。
よくある事例として、退職予定日の翌日が転職先への入社日になっているケースがあげられます。
退職日までに消化しきれなかった有給休暇は、原則として無効になります。
検討できる対処法は、以下のとおりです。
ただし、有給の買取に会社が応じる義務はありません。
転職先に手間や迷惑をかける行為も、できる限り避けるべきでしょう。
円満退職や今後のキャリア構築を考慮すると、有給消化にこだわりすぎないほうがよい場合もあります。
長期的な視点を持って対応を検討することが大切です。
原則として、有給休暇は事前申請が必要です。
過去の欠勤に有給を充てることや、退職後に取得することは認められません。
たとえば、数日間欠勤したのち退職代行を利用して退職意思を通知したとします。
|
日付 |
対応 |
|
11/1〜11/3 |
欠勤 |
|
11/4 |
代行業者が労働者の退職意思を通知 |
このとき、11/1〜11/3の欠勤分に有給消化を要求しても、会社に拒否されるおそれがあります。
退職の意思が固まったら、速やかに代行業者へ相談のうえ、有給取得の意思表示をすることが大切です。
民間企業が運営する退職代行サービスには、有給取得の交渉権限がありません。
そのため、会社から以下のように主張された場合は、有給を消化できないおそれがあります。
本来、会社は有給休暇の取得を拒否できません。
唯一認められているのは、正当な理由がある場合の「時季変更権」のみです。
しかし、会社の要求が明らかに不当でも、民間企業には立ち向かう術がありません。
労働者の権利を行使するためには、交渉権限のある運営組織を選ぶことが大切です。
退職代行に寄せられる質問の中から、退職金に関連する事項をまとめました。
回答を見ていきましょう。
退職代行の利用を理由に、退職金を減額することは許されません。
減額が認められるのは、重大な不信行為がある場合の懲戒処分として、就業規則に明記されているケースに限定されます。
ただし退職金には、賃金の後払い的な性質があるため、単に規定を設けているだけでは不十分です。
過去の裁判の概要を一例として見てみましょう。
よほど条件が揃わない限り、退職金の減額や不支給は法的に認められないことが分かります。
そのため会社側からすると、交渉権限を有する代行業者に不当な主張をするのは、時間と労力の無駄に等しい行為だといえます。
労働組合や弁護士による退職代行サービスを利用すれば、会社が不当に退職金を減額する危険性は限りなく低くなるでしょう。
参考:小田急電鉄(退職金請求)事件|全国労働基準関係団体連合会
退職代行利用の有無は、退職金の受け取り金額に影響しません。
以下の条件における退職金の平均支給額を、勤続年数ごとに比較してみましょう。
|
勤続年数 |
自己都合退職の退職金平均額 |
会社都合退職の退職金平均額 |
|
3年 |
34万1,000円 |
69万6,000円 |
|
5年 |
63万1,000円 |
121万3,000円 |
|
10年 |
182万8,000円 |
305万7,000円 |
|
20年 |
761万9,000円 |
1,021万6,000円 |
会社都合退職のほうが支給額は高くなりますが、勤続年数が長くなるほど自己都合退職との差は縮まる傾向にあります。
参考:賃金事情等総合調査 退職金、年金及び定年制事情調査|中央労働委員会
有給休暇を消化して退職しても、退職金の支給額に影響はありません。
有給を消化している期間は勤続年数に含まれるため、むしろ有利になるケースもあります。
なお、退職時に未消化の有給があり、会社に買い取ってもらった金銭は「退職所得」として扱われます。
退職金を含めた退職所得には「退職所得控除」が適用されるため、税負担が軽減する可能性もあるでしょう。
退職代行を利用しても、退職金は通常どおり受け取れます。
ただし、会社が支給を渋っている場合は、代行業者に交渉してもらう必要があるでしょう。
現在の状況をふまえ、適切な運営組織を選ぶことが大切です。
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この記事の監修者
長谷川 義人
東京労働経済組合
労働組合代表
プロフィール
高校を3ヶ月で中退しフリーターとなる。その後、20歳で定時制高校に通い25歳で定時制大学を卒業。
Tech系ITベンチャー企業にてBtoB営業からキャリアをスタートし、独立して代表として経営まで幅広く経験。
現在は「令和ならではの労働問題解決」に取り組むため、労働組合法人東京労働経済組合の代表に就任。
適法運営を徹底する退職代行サービス「退職代行ガーディアン」を運営し、日本の退職問題の改善と人材の最適配置を支える新たな社会インフラの確立に取り組む。
違法な退職代行が横行する業界の健全化にも力を入れており、労働者が安心して「次の一歩」を踏み出せる社会の実現を目指している。