公開日 2025.12.20 更新日 2026.01.22

退職代行は弁護士提携だと安全?発生しがちな違法行為やデメリット

退職代行サービスの提供元は、弁護士・労働組合・民間企業の3つに大別されます。
「弁護士提携」を謳っているのは、おもに民間企業による退職代行です。

近年、民間企業による退職代行の違法性が議論されており、実際にトラブル事例も報告されています。
安全かつスムーズな退職を実現するためには、適法なサービスを見極めることが不可欠です。

本記事では、弁護士提携の退職代行サービスについて、発生し得る違法行為や利用時のデメリットを解説します。

退職代行サービスとは

退職代行とは、労働者の代わりに会社へ退職の意思を伝えるサービスのことです。

本来、期間の定めなく雇用されている労働者は、2週間前に会社へ退職を通知することで雇用契約を解除できます。
民法第627条によって、退職の自由が保障されているためです。

しかし、職場環境が悪かったり、強い引き留めを受けたりすると、本人が直接申し出てもスムーズに退職できない場合があります。
そこで、ストレスなく円滑に退職するための手段として、退職代行サービスが役立ちます。

ここでは以下の観点で、退職代行サービスの現状を見ていきましょう。

  • 運営元によって3種類に分けられる
  • 違法業者の調査・取締りが強化されている
  • 現場では「交渉」を求められる場面が多い

それぞれ解説します。

参考:民法第627条|e-Gov法令検索

関連記事:退職代行を利用すると即日退職できる?リスクやメリットについて解説

運営元によって3種類に分けられる

退職代行サービスは、運営元によって法的に認められている権限が異なります。
おもな運営主体ごとのサービス提供範囲は、以下のとおりです。

運営元 弁護士 労働組合 民間企業
退職意思の伝達
条件の交渉 ×
残業代などの支払い要求 ×
損害賠償請求 × ×
訴訟対応 × ×

弁護士は法律のスペシャリストとして、あらゆる法律事務を代行可能です。
労働組合は、訴訟に関する代理人は務められないものの、労働組合法の範囲内で退職条件の交渉を代行できます。

一方、民間企業による退職代行が担える業務は、退職意思の伝達に限られます
労働者の代理人として、弁護士(弁護士法人)以外の者が条件交渉や金銭請求などを行うことは、弁護士法違反に該当するためです。

「弁護士提携」を謳う業者は、3種類のうちの「民間企業」に該当します。
法律で認められている行為に大きな制限があるため、違法リスクがほかの運営形態よりも高くなります。

違法業者の調査・取締りが強化されている

近年では、無資格業者が法の隙間をついて参入し、適法であることを装って利用者を誤認させるケースが増加しています。
よく報告されるトラブル事例は、以下のとおりです。

  • 退職が成立しない
  • 追加費用を請求される
  • 企業に無視される

退職代行は、2018年頃に商業化が進んだ比較的新しいサービスです。
判例が蓄積されておらず、業界に精通した専門家も少ないため、業界の健全化が十分に進んでいません。

こうした状況をふまえ、東京弁護士会は以下のような警告を発し、違法業者の調査・取締りを強化しています。

「退職」というと会社を辞めるだけのことのようにも思えます。
しかし、実際に退職するには、会社と話し合いをして決めておかなければならない事項もあります。
例えば、事例の残業代、パワハラの慰謝料のほか、退職金、残っている有給休暇取得などの問題です。
これらは「法律的な問題」であり、業者が、本人に代わって会社と話し合いをすることは、非弁行為となる可能性があります。

また、非弁行為の問題だけではなく、「法律的な問題」について、正しい法律的な保護を受けることができない場合もあり得ます。

(中略)

退職代行サービスの利用を考える際には、「退職」だけでなく、退職に関係して発生する「法律的な問題」にも目を向ける必要があります。
十分にご注意ください。

引用:退職代行サービスと弁護士法違反|東京弁護士会

関連記事:退職代行サービスのトラブルとは?避けるためのポイントを解説

関連記事:非弁行為とは?弁護士法違反の行為を退職代行や保険会社の具体例で解説

現場では「交渉」を求められる場面が多い

会社との法的トラブルを抱えていないケースでも、以下のような「交渉」が必要な場面は頻発します。

  • 「考え直してほしい」と引き留められ、退職日の調整が必要になる
  • 「退職日までは出勤してほしい」と有給消化を認めてもらえない
  • 「退職代行業者とはやり取りしない」とコミュニケーションを断られる
  • 「急に辞めるなら損害賠償を請求する」と脅される

上記のような場面で適切な主張ができなければ、手続きが停滞するだけでなく、不利な条件を受け入れざるを得ないこともあります。
円滑に話し合いを進めつつ、労働者の権利を最大限に行使するためには、交渉権限のある業者に依頼することが大切です。

弁護士提携の退職代行で発生し得る違法行為

弁護士提携を謳うサービスは「弁護士が監修しているから安心」と錯覚しやすい形態です。
しかし、弁護士による実務関与の度合いを確認しなければ、サービスの適法性を判断できません。

ここでは、弁護士提携の退職代行サービスで発生しやすい違法行為を見ていきましょう。

  • 弁護士の名義を借り、民間業者が法律事務を行う
  • 報酬を受け取り、問題の処理を弁護士に依頼する

詳細を解説します。

弁護士の名義を借り、民間企業が法律事務を行う

弁護士提携を謳いながら、実際は無資格業者が問題を処理しているパターンです。
弁護士法第72条では、弁護士または弁護士法人でない者が、法律事務を報酬目当てで扱うことを「非弁行為」として禁じています。

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

引用:弁護士法第72条|e-Gov法令検索

顧問弁護士にアドバイスをもらっている場合でも、実際に交渉を行っているのが民間企業であれば、違法性は免れません。
依頼先を選ぶ際は、サービスの提供範囲が法律に適合していることを確認する必要があります。

関連記事:退職代行における非弁行為とは?違法業者の特徴や判断基準・判例を解説

報酬を受け取り、問題の処理を弁護士に依頼する

依頼者から代金を受け取った民間企業が、交渉を弁護士に引き継ぐことも、法律違反にあたる可能性があります。
弁護士法では、法律事務の周旋(仲介・紹介)を業務として行うことが禁止されているためです。

たとえば、民間企業が以下のような流れで対応した場合は、違法性が高まります。

  • 弁護士提携の民間企業が、依頼者から代金を受け取り、退職代行サービスを受注した
  • 業者は、本人の代わりに「退職すること、未払い賃金を請求すること」を会社に伝えた
  • 会社側が未払い賃金の支払いを渋ったため、業者は交渉対応を弁護士にバトンタッチした
  • 弁護士が話し合いを行った結果、会社は未払い賃金があることを認め、残業代が支払われた

このような「斡旋スキーム」を組んでいる業者は実在するため、厳重な警戒が必要です。
弁護士が直接依頼を受けていない場合や、自ら業務を行っていない場合は「非弁行為」にあたる可能性があります。

参考:退職代行サービスと弁護士法違反|東京弁護士会

弁護士提携の退職代行を選ぶデメリット

民間企業が運営元の退職代行は、弁護士や労働組合が運営しているサービスより安価な傾向にあります。
「費用負担を軽減したい」「単に退職意思を伝えてもらえればよい」と考えている方にとっては、選択肢の1つになり得るでしょう。

しかし、弁護士提携の民間企業による退職代行には、以下のようなデメリットがあります。

  • 運営実態を見極めにくい
  • 退職に失敗するおそれがある
  • 会社から直接連絡を受ける可能性がある

それぞれ見ていきましょう。

運営実態を見極めにくい

民間企業による退職代行でも、業務内容が「退職意思の伝達」に限られていれば、非弁行為を免れる余地があります。
しかし、業者の実態を依頼時に見極めるのは難しいため、意図せず違法行為に関わってしまう懸念を払拭できません。

弁護士提携の業者に依頼したいときは、インターネット上の知名度や口コミだけでなく、以下のような事項を総合的に確認しましょう。

  • 「提携」や「監修」の表記がある場合、その内容を具体的に説明しているか
  • 対応できる業務とできない業務を明示しているか
  • 問い合わせ時の回答が明確か

初回相談の際に「弁護士と提携しているため交渉対応が可能」などと匂わす業者は要注意です。
リスク回避の観点では、弁護士や労働組合が運営している退職代行サービスをおすすめします。

退職に失敗するおそれがある

民間企業による退職代行では「結局退職できず、自分で会社とやり取りせざるを得なくなった」といった事例も報告されています。

たとえば、法的リスクを回避するために、以下のような姿勢を貫く会社もあります。

  • 弁護士か労働組合以外の退職代行には一切応じない
  • 本人からの退職しか受け付けない

このような対応をされても、無資格業者ではなすすべがありません。
最終的には自分で意思を通知しない限り、退職手続きの停滞が続くおそれもあることを考慮しましょう。

会社から直接連絡を受ける可能性がある

民間企業は、弁護士や労働組合と異なり、正式な代理人としての役割を担えません
そのため会社から「本当に本人の意思なのか」を改めて確認される可能性があります。

また、会社側に何らかの主張がある場合、交渉権限のない業者を通していては手続きが進みません。
会社によっては、問題を円満に解決するために、本人に直接話し合いを求めるケースもあります。

退職希望者の多くは、会社とのやり取りを避けるために退職代行を利用しているはずです。
直接連絡のリスクを軽減したい場合は、交渉対応を合法的に依頼できる運営元を選びましょう。

弁護士提携の退職代行サービスでよくある質問

弁護士提携の退職代行サービスについて、よくある質問事項をまとめました。

  • 弁護士による退職代行が失敗することはある?
  • 弁護士提携の退職代行サービスの費用相場は?
  • 退職代行モームリの違法性とは?

回答を見ていきましょう。

弁護士による退職代行が失敗することはある?

退職代行を弁護士に任せれば、失敗するリスクを大幅に軽減できます。
弁護士は、労働者の正式な代理人として、あらゆる法律事務を代行できるためです。

ただし、弁護士に依頼した場合でも、退職が必ず成功するとは限りません。
たとえば、以下のような事態に陥る懸念は残ります。

  • 弁護士報酬が高額で追加費用を支払えず、十分な交渉を依頼できなかった
  • 退職代行の実績が不十分な弁護士を選んでしまい、希望の条件で退職できなかった
  • 証拠集めが足りず、パワハラの事実を認めてもらえなかった

十分な費用を用意したうえで、実績のある弁護士に依頼できれば、成功の可能性は高まるでしょう。

なお「弁護士運営」と「弁護士提携」は明確に異なります。
後者の運営元は民間企業であるケースが大半なので、混同しないようにしましょう。

弁護士提携の退職代行サービスの費用相場は?

退職代行サービスの料金相場は、運営元によって異なります。

運営元 費用相場
民間企業 1万5,000円〜5万円
労働組合 2万5,000円〜3万円
弁護士 5万円〜10万円

弁護士提携型の退職代行は、民間企業が運営しているため、比較的安価に利用できます。
しかし、交渉やトラブル対応などは基本的に依頼できません。

一方、労働組合による退職代行では、労使間の問題に関する交渉を代行してもらえるため、費用対効果が高いといえます。
「できる限り有利な条件で退職したいが、費用はかけられない」という方は、労働組合による退職代行を検討しましょう。

関連記事:退職代行の弁護士費用相場は?料金の内訳やメリット・デメリット

退職代行モームリの違法性とは?

退職代行モームリの業務は「弁護士法に抵触するのではないか」との指摘があり、さまざまなメディアで違法性が議論されています。

モームリ(株式会社アルバトロス)の代表者が「提供しているサービスは合法である」と主張する根拠は、以下のとおりです。

  • 会社との交渉権限がないため、業務は「退職意思の伝達」のみに留めている
  • 交渉が必要な場面になったら、提携している労働組合員が対応する
  • 法的紛争が予見される場合は、あらかじめ弁護士を紹介する

しかし、業務の一環として、法律問題の処理を他者へ依頼することは非弁行為に該当します。
具体的には、東京弁護士会が公表している以下の事例が参考になります。

【事例2】

  • 本人の要望は、契約期間の途中で会社を辞めること、及び在職中に受けたパワハラの慰謝料を請求することであった。
  • 業者は、労働組合と提携しており、法律的な問題について話し合い(交渉)になったら、提携先の労働組合が行うとしていた。本人は、業者に代金を支払って、依頼した。
  • 業者は、本人に代わって、会社に対して伝えたところ、会社側は「パワハラなんかしていない。」と主張した。
  • 業者は、労働組合と交代し、労働組合が話し合いを行った結果、会社はパワハラを認め、慰謝料が支払われることになった。

【解説】
契約期間の途中での会社を辞めること(雇用契約の解約)や、パワハラを受けた場合の慰謝料などの損害賠償請求は、法律的な問題です。
本事例では、業者は、本人から代金を受け取って、法律的な問題について話し合い(交渉)になったら、提携先の労働組合が行うとしています。しかしながら、お金を受け取って、法律的な問題の処理を他者(本事例では労働組合)へ斡旋することは、非弁行為です。

引用:退職代行サービスと弁護士法違反

以上の状況から、退職代行モームリの運営実態は、違法リスクが極めて高いといわざるを得ません。

まとめ:弁護士提携の退職代行は運営実態の見極めが必要

弁護士提携を謳う退職代行の運営元は、あくまで民間企業です。
交渉を要する場面において、業者が自ら対応したり、労働組合や弁護士に交替したりすると、非弁行為に該当する危険性があります。

業者側に意図がなかったとしても、弁護士法に抵触するリスクが極めて高い運営形態といえるでしょう。
依頼者側に被害が及ぶ可能性もあるため、サービスを選ぶ際は運営実態を十分に見極めることが大切です。

退職代行ガーディアンは、25年を超える労働組合運営を通じて培ったノウハウで、安全・安心な退職を実現するサービスです。
当組合では、退職代行に関するお悩みを抱えている方に向けて、LINE相談窓口を設置しています。

弁護士提携の退職代行が安全なのかどうか知りたい方は、お気軽にご相談ください。
専門のスタッフが、適法かつ安全な退職の方法をご案内します。

この記事の監修者

長谷川 義人

東京労働経済組合
労働組合代表

プロフィール

高校を3ヶ月で中退しフリーターとなる。その後、20歳で定時制高校に通い25歳で定時制大学を卒業。
Tech系ITベンチャー企業にてBtoB営業からキャリアをスタートし、独立して代表として経営まで幅広く経験。
現在は「令和ならではの労働問題解決」に取り組むため、労働組合法人東京労働経済組合の代表に就任。
適法運営を徹底する退職代行サービス「退職代行ガーディアン」を運営し、日本の退職問題の改善と人材の最適配置を支える新たな社会インフラの確立に取り組む。
違法な退職代行が横行する業界の健全化にも力を入れており、労働者が安心して「次の一歩」を踏み出せる社会の実現を目指している。

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