依頼者や関係者に不利益を与え、法的秩序を乱す行為であるため、罰則を持って禁じられています。
本記事では、非弁行為の基礎知識や成立要件を、分かりやすくまとめました。
退職代行や不動産会社、保険会社の業務における非弁行為も紹介しますので、違法業者を見分ける際の参考にしてください。
非弁行為とは?分かりやすく解説
非弁行為とは、弁護士にしか認められていない行為を、無資格者が報酬目当てで行うことです。
弁護士法で禁じられている違法行為であり、処罰の対象となります。
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弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。 |
弁護士が扱う法律業務の中には、当事者や関係者に大きな影響を及ぼす法的紛争もあります。
高度な専門知識が必要とされる業務を、無資格者が報酬目的で行えば、依頼者と関係者の利益を損害しかねません。
また、弁護士に法律事務全般の独占が認められている理由は、弁護士法によって厳格な資格要件や規制が定められているためです。
必要な資格や規律のないまま他人の法的トラブルに介入することは、法的秩序の乱れにつながるおそれがあります。
以上の理由から、非弁行為は公益に反することとして、罰則を持って禁じられています。
参考:昭和44(あ)1124 弁護士法違反 昭和46年7月14日 最高裁判所大法廷 判決 破棄差戻 名古屋高等裁判所|裁判所
非弁行為が成立する要件
非弁行為は、以下の要件をすべて満たした場合に成立します。
- 弁護士または弁護士法人でないこと
- 報酬を得る目的があること
- 法律事件に関すること
- 法律事務の取り扱い、またはその周旋を業とすること
- 法律によって特別に認められている行為でないこと
詳細を見ていきましょう。
弁護士または弁護士法人でないこと
非弁行為に該当するためには、行為者が「非弁護士」であることが前提条件となります。
弁護士または弁護士法人の活動は、非弁行為になり得ません。
なお、弁護士法人とは、社員全員が弁護士である法人のことです。
弁護士法人による行為は、弁護士個人による行為と同等と見なされるため、非弁行為に該当しません。
関連記事:退職代行は弁護士提携だと安全?発生しがちな違法行為やデメリット
報酬を得る目的があること
非弁行為が成立するのは、報酬を得る目的がある場合に限られます。
たとえば、無資格者が知人の法律相談を行っても、金品目当てではなく、実際に得ていない場合は非弁行為に該当しません。
ただし、報酬には「物品」や「接待」も含まれることに注意が必要です。
ほかの取引と関連しており、全体を見れば有償だと評価できる場合も、報酬目的だと判断されることがあります。
法律事件に関すること
非弁行為に該当し得る業務は、以下の事件に関する事務です。
- 訴訟事件
- 非訟事件
- 審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件
- その他一般の法律事件
なお、弁護士法第72条の「法律事件」の意味については、統一的な解釈がありません。
どのような事件を法律事件として扱うべきか、紛争性が必要とする見解と、不要とする意見の両方が存在します。
| 事件性必要説 | 法的紛争のある事件に限る |
| 事件性不要説 | 法的紛争の有無を問わない |
明確な判断基準は存在しないものの、日本弁護士連合会の出版書籍や、複数の裁判例では「事件性不要説」が採用されています。
法律事務の取り扱い、またはその周旋を業とすること
以下のような活動を「業として」行った場合は、非弁行為に該当します。
| 非弁行為に該当し得る業務 | 内容・具体例 |
| 法律事務 |
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| 周旋 | 法律事務の仲介・紹介 |
「業とする」とは、営利性があるか否かにかかわらず、意思を持って反復継続することを指します。
たとえば「偶然紛争解決に関与した」「知人に好意で弁護士を紹介した」などの場合は、非弁行為にあたりません。
一方で、個人の社会生活の範囲を超え、今後も繰り返す意思を持って法律事務を扱えば、非弁行為に該当する可能性が高まります。
法律によって特別に認められている行為でないこと
ここまでの要件をすべて満たす場合でも、非弁行為には例外があります。
以下の士業・企業には、一定の権限が認められているためです。
| 司法書士 | 研修を受け、考査に合格した「認定司法書士」は、簡易裁判所での民事訴訟代理権(訴額140万円以下)を持つ |
| 税理士 | 税務訴訟において、裁判所の許可を得なくても「補佐人」として出廷・陳述できる |
| 行政書士 | 研修を受け、考査に合格した「特定行政書士」は、行政庁への不服申し立ての代理権を持つ |
| 債権回収会社 | 法務大臣の許可を受けた債権回収会社は、特定金銭債権の管理・回収業務を行える |
なお、司法書士や行政書士などの士業は、弁護士と近接した領域の業務を扱うため、非弁行為が問題になりやすい側面もあります。
参考:司法書士法第3条|e-Gov法令検索
参考:税理士法第2条の2|e-Gov法令検索
参考:行政書士法第1条の3|e-Gov法令検索
参考:債権管理回収業に関する特別措置法第11条|e-Gov法令検索
どこからが非弁行為?具体例を紹介
ここでは、非弁行為にあたる具体的な事例を見ていきましょう。
とくに問題になりやすい、以下の職種をピックアップしました。
- 退職代行サービスの例
- 不動産会社の例
- コンサルタントの例
- 保険会社の例
それぞれ解説します。
退職代行サービスの例
近年では、退職代行業者による非弁行為が取り沙汰されています。
退職代行において、労働者の代わりに会社と条件交渉を行うことは「法律事務」にあたるのではないかと指摘されているためです。
具体的には、民間企業による以下のような行為の違法性が問われています。
- 依頼者から金銭を受け取り、本人の代わりに会社と残業代に関する交渉を行う
- 依頼者から金銭を受け取り、退職にまつわる問題の処理を弁護士に斡旋する
業務が「退職意思の伝達」に留まる場合は法律事務にあたらず、弁護士法違反を免れる余地があるでしょう。
しかし退職時は、有給消化や退職日など、さまざまな事項について合意形成が必要です。
会社との交渉を避けていては手続きが進まないため、無資格業者が何らかの非弁行為に及んでいるケースが散見されます。
依頼者自身のリスクを軽減する意味でも、適法なサービスを見極めることが大切です。
関連記事:退職代行サービスは弁護士法違反?非弁行為の具体例や法的効力を解説
関連記事:退職代行の弁護士費用相場は?料金の内訳やメリット・デメリット
不動産会社の例
不動産オーナーから報酬を受け取り、物件の管理を代行する不動産会社も多く存在します。
しかし、管理委託の一環で以下のような業務を行うと、非弁行為に該当する可能性があります。
- 入居者への賃料の交渉
- 滞納者への賃料の督促
- 賃借人との立ち退き・明け渡し交渉
オーナーから直接的な報酬を得ていなくても「委託関係が継続する事実」が報酬と見なされれば、非弁行為を免れません。
なお、一定の研修を修了した「宅地建物取引士」は、ADRの調停人として合法的に調停業務を行えます。
参考:裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律|e-Gov法令検索
コンサルタントの例
キャリアコンサルタントや経営コンサルタントなどの業務において、法的解釈が必要な場面は少なくありません。
たとえば、以下のような行為は「法律事務」と見なされ、非弁行為に該当するリスクがあります。
- クライアントの代わりに、会社の人事労務部とトラブルに関する交渉を行う
- 特定の契約書に対して、個別具体的なコンサルティングを行う
法的な関係性を持つ当事者として、権利義務の発生・変更・消滅などに直接関わると、業務の違法性が高くなります。
保険会社の例
交通事故の示談交渉は、不法行為にもとづいた損害賠償請求を行うものであり、法律事務にあたります。
しかし、保険会社が交通事故の示談を代行することは、原則として非弁行為に該当しません。
保険会社は、事故の相手に保険金を支払う立場であり「当事者」として示談を行っていると判断されるためです。
ただし、以下のケースにおける示談代行は、非弁行為にあたる可能性があります。
- 被保険者に過失がない場合
- 特約事項で定める免責事由に該当する場合
- 損害賠償請求額が、自賠責保険の補償限度額に収まる場合
いずれの場合も、保険会社側に保険金の支払い責任がないため、示談の代行は依頼できません。
非弁提携も同様に禁じられている
非弁提携とは、弁護士が非弁行為者と提携して、以下のような行為に及ぶことです。
- 無資格業者への名義貸し
- 報酬の分配
- 紹介料のやり取り
非弁提携を行った弁護士は、刑事罰や懲戒処分の対象となります。
どのような行為が該当するのか見ていきましょう。
無資格業者への名義貸し
弁護士としての名義を、弁護士資格のない者に貸す行為は非弁提携にあたります。
一例として、法律事務所が広告運用業者と連携するケースを見てみましょう。
- 広告運用業者から「法律事務所の名前を貸してもらう代わりに、弊社で業務を大量に受注します」と持ちかけられる
- 弁護士は「報酬の分配」を条件として、名義貸しに応じる
- 業者は広告を駆使し、比較的対応しやすい法律事件(例:過払い金請求)を大量に受注する
- 業者は法律事務所に、事件処理を行うための事務員を派遣する
- 派遣された事務員が、無資格で法律事件を扱う
無資格者に事件処理をさせた広告運用業者の対応は、非弁行為に該当します。
さらに、業者の業務を是認した弁護士の行為は「非弁提携」と見なされ、刑事罰や懲戒処分の対象となります。
報酬の分配
弁護士は、職務に関する報酬を非弁護士との間で分配してはなりません。
非弁業者と報酬を山分けするのは言語道断ですが、注意すべきは以下のようなケースです。
| ケース1 |
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| ケース2 |
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いずれも、法律事務所の代表者が「非弁護士への報酬分配を行った」と見なされ、非弁提携にあたるおそれがあります。
案件の「売上」や「受注件数」を直接的な評価基準にしてしまうと、違法リスクが高まるため注意しましょう。
紹介料のやり取り
弁護士は、依頼者の紹介に対し、謝礼や対価を支払ったり受け取ったりしてはなりません。
2つの具体例を確認してみましょう。
| ケース1 |
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| ケース2 |
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どちらのケースも「弁護士としての職務を行わずに対価を得ている」点が問題だとされています。
関連記事:退職代行は弁護士提携だと安全?発生しがちな違法行為やデメリット
非弁行為に関してよくある質問
非弁行為への理解を深めるために、よく寄せられる質問を確認していきましょう。
- 無報酬なら非弁行為に該当しない?
- 非弁行為の罰則とは?
それぞれ回答します。
無報酬なら非弁行為に該当しない?
無報酬で法律相談に乗ることは、原則として非弁行為に該当しません。
非弁行為は「報酬を得る目的がある」ことが成立要件になるためです。
たとえば、知人に法的なアドバイスをしても、相談料や飲食代などを受け取っておらず、単発的な行為であれば違法性はありません。
ただし無報酬であっても、反復継続して法律事務を行う意思があれば、違法と認定される場合もあります。
非弁行為の罰則とは?
「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処される可能性があります。
たとえ逮捕や実刑判決に至らなくても、非弁行為が発覚すれば社会的信用の失墜は免れません。
また、弁護士が非弁提携を行ったときは、懲戒を受けます。
法律や会則に違反することや、職務の内外を問わず「品位を失うべき非行」を行うことは、弁護士法上の懲戒事由に該当するためです。
懲戒は、行為の悪質性などを加味し、以下いずれかの処分が下されます。
| 懲戒の種類 | 詳細 |
| 戒告 | 厳重に注意・警告し、弁護士に反省を求める |
| 2年以内の業務停止 | 一定期間、弁護士の業務を禁止する |
| 退会命令 | 所属弁護士会から強制的に退会させられ、弁護士の身分を失うが、弁護士資格は失わない |
| 除名 | 弁護士の身分を失い、除名日から3年間は弁護士となる資格も失う |
懲戒委員会の議決にもとづき、対象弁護士の所属弁護士会が懲戒を行います。
参考:弁護士法第77条|e-Gov法令検索
参考:弁護士法第56条|e-Gov法令検索
参考:懲戒制度|日本弁護士連合会
まとめ:非弁行為が疑われる業者とは取引しないこと
違法な業者と取引すると、事態がますます悪化するばかりか、問題が解決しないまま金銭を失うおそれもあります。
とくに、退職代行における違法業者のトラブル事例は少なくありません。
安全かつスムーズな退職を実現するためには、非弁業者を適切に見分けることが大切です。
退職代行ガーディアンは、労働組合法人「東京労働経済組合」が運営する適法な退職代行サービスです。
当組合では、退職代行における悩み・疑問を相談できるLINE相談窓口を設置しています。
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退職に関する悩みがある方は、お気軽に無料相談をご利用ください。
この記事の監修者
長谷川 義人
東京労働経済組合
労働組合代表
プロフィール
高校を3ヶ月で中退しフリーターとなる。その後、20歳で定時制高校に通い25歳で定時制大学を卒業。
Tech系ITベンチャー企業にてBtoB営業からキャリアをスタートし、独立して代表として経営まで幅広く経験。
現在は「令和ならではの労働問題解決」に取り組むため、労働組合法人東京労働経済組合の代表に就任。
適法運営を徹底する退職代行サービス「退職代行ガーディアン」を運営し、日本の退職問題の改善と人材の最適配置を支える新たな社会インフラの確立に取り組む。
違法な退職代行が横行する業界の健全化にも力を入れており、労働者が安心して「次の一歩」を踏み出せる社会の実現を目指している。

