退職が決まった時点で、必ずしも次の仕事が決まっているとは限りません。
「今後の生活費はどうしよう」「次の仕事が見つからない」と不安を抱く方もいるでしょう。
そうした場面で頼りになる制度が「退職給付金」です。
この記事では、退職給付金の基本的な仕組みや制度の種類、申請方法、注意点までを分かりやすく解説します。
自分に合った給付金の受け取り方を理解し、適切に活用できるようになりますので、ぜひ最後までご確認ください。
退職給付金とは
退職給付金とは、国が生活の安定を目的として設けている支援制度の総称です。
会社を退職したあと、すぐに再就職先が決まらない方や、何らかの理由で就労が困難な方が対象となります。
なお、「退職給付金」という単独の制度が存在するわけではありません。
失業保険をはじめとする複数の支援制度をまとめて「退職給付金」と呼んでいます。
それぞれの制度には支給対象や条件が定められており、該当すれば給付を受けることが可能です。
ただし、退職後の給付金は、原則として自ら申請しなければ支給されません。
申請しなかったことにより制度を利用できず、経済的に困窮する事例もあります。
こうした事態を避けるためにも、退職給付金の仕組みや種類について、あらかじめ把握しておくことが重要です。
退職給付金の種類
退職給付金にはさまざまな制度があります。
それぞれ対象となる状況や条件が異なるため、自分のケースに当てはまるものを確認しておきましょう。
ここでは、主な退職給付金制度の目的、支給条件、支給額の目安などについてご紹介します。
なお、文中に登場する「賃金日額」とは、退職前6か月間の賃金合計を180で割って算出される金額です。
失業保険
| 目的 | 失業中の生活費支援 |
| 支給条件 |
以下の要件をすべて満たしている方 ●就職しようとする積極的な意思がありハローワークへの来所・求職の申し込みを行っているものの、就業できない状態にある |
| 支給額の目安 | 賃金日額の50~80%程度(60歳~64歳については45~80%) |
一定期間雇用保険に加入していた方が離職した際、再就職までの生活費を支援する制度が失業保険(正式名称:基本手当)です。
対象は、「働きたいが就職先が見つからない方」です。
求職活動をしていない方は対象外であり、ハローワークを通じて求職活動を行う必要があります。
解雇・定年・契約期間満了で離職となった場合は、 離職票提出・求職申し込みが済んでから待機期間(7日)を過ぎると支給開始となります。
一方、自己都合・懲戒解雇で離職となった方は、離職票提出・求職申し込みが済んでから待機期間(7日)を過ぎ、かつ1~3か月の給付制限期間を過ぎてから支給されます。
自己都合による退職ではすぐに給付されない点に注意しておきましょう。
受給期間は離職日の翌日から1年間です。期間内に手続きを行わないと、給付日数が残っていても受給できなくなります。
関連記事:退職後に失業保険を受け取るには?必要な手続きや流れを解説
再就職手当
| 目的 | 早期再就職の促進 |
| 支給条件 |
以下の要件をすべて満たしている方 ●受給手続き後、7日間の待期期間満了後に就職、または事業を開始した |
| 支給額の目安 | 基本手当の支給残日数×60~70% |
再就職手当は、早期就職によって「失業手当を損した」と感じることがないように支給される制度です。
先に紹介した失業保険の受給資格がある人が、給付日数を残した状態で早く再就職すると、損をしたように感じることがあります。
こうした不公平感を解消するために設けられているのが再就職手当です。
早く再就職すると、給付率が高くなります。
失業保険があるからと考えて、仕事探しを本格的に始めるのを先延ばしにしてしまう人もいるかもしれません。
しかし、再就職手当は早く働き始めた場合でも受け取れるため、早期の生活安定につながります。
経済的にもメリットがあるので、制度の内容を確認しておきましょう。
支給日数を所定給付日数の3分の2以上残して早期に再就職した場合は、基本手当の支給残日数の70%の額、3分の1以上を残して再就職した場合は60%の額が支給されます。
参考:(PDF)ハローワークインターネットサービス:再就職手当のご案内[PDF]
就業促進定着手当
| 目的 | 再就職後の定着支援 |
| 支給条件 |
平成26年4月1日以降の再就職で、以下の要件をすべて満たしている方 ●再就職手当の支給を受けている |
| 支給額の目安 | 以下で計算される額(離職前の賃金日額-再就職後6か月間の賃金の1日分の額)×再就職後6か月間の賃金の支払基礎となった日数※上限あり |
再就職後の給与が下がった場合の補填として支給される制度です。
なお、支給対象は賃金の総額が一定以上の場合に限られるため、すべての人が受け取れるわけではありません。
「せっかく早く働き始めたのに収入が減ってしまった」と感じる方は、就業促進定着手当の対象となる可能性があるので、制度について確認してみることをおすすめします。
また、申請できるのは再就職後6か月経過時点となるため、すぐに受給できる制度ではない点にも注意が必要です。
参考:(PDF)厚生労働省:再就職後の賃金が、離職前の賃金より低い場合には「就業促進定着手当」が受けられます[PDF]
広域求職活動費
| 目的 | 遠方での面接・試験のための交通費支援 |
| 支給条件 |
以下の要件をすべて満たしている方 ●雇用保険の受給資格者である |
| 支給額の目安 | 実費相当 |
ハローワークの紹介で遠方の企業に面接に行く場合、移動に費用がかかることになります。
広域求職活動費は、こうした交通費の一部または全額を支援する制度です。
自己負担の軽減につながります。
利用には事前にハローワークの指示が必要で、自己判断で訪問した場合は対象外となることがあります。
地元で希望する職場が見つからない場合は、 広域求職活動費を活用して就職先の選択肢を広げることも検討しましょう。
参考:(PDF)厚生労働省:「広域求職活動費」 と 「移転費」 のご案内[PDF]
教育訓練給付金
| 目的 | スキルアップの支援 |
| 支給条件 | 対象講座を修了し、一定の雇用保険加入歴がある |
| 支給額の目安 | 最大で受講費用の80%(上限あり) |
教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定する講座を受講・修了することで、受講費用の一部が支給される制度です。
種類ごとの支給割合と講座例は以下の通りです。
| 種類 | 最大支給額(上限あり) | 対象講座の例 |
| 専門実践教育訓練 | 受講費用の80% | ●業務独占資格などの取得を目標とする講座 ●デジタル関係の講座 ●大学院・大学・短期大学・高等専門学校の課程 ●専門学校の課程 |
| 特定一般教育訓練 | 受講費用の50% | ●業務独占資格などの取得を目標とする講座 ●デジタル関係の講座 ●大学等、専門学校の課程 |
| 一般教育訓練 | 受講費用の20% | ●資格の取得を目標とする講座 ●大学院などの課程 |
対象分野は医療・IT・事務など多岐にわたり、ハローワークで要件照会を行うことで、自身が給付対象かどうかも確認可能です。
参考:(PDF)厚生労働省:教育訓練給付金のご案内[PDF]
移転費
| 目的 | 就職に伴う転居費用の補助 |
| 支給条件 |
以下の要件をすべて満たしている方 ●雇用保険の受給資格者である |
| 支給額の目安 | 実費相当(上限あり) |
勤務先や訓練施設が遠方にある場合、通勤が困難で引っ越しが必要となることがあります。
そうした際にかかる転居費用を補助するのが移転費です。
支給には事前審査があり、対象と認められる必要があります。
また、 実際にかかった費用については領収書などの証明書類の提出が求められます。
転職を機に住環境が大きく変わると経済的な負担も増えてしまいますが、この際の負担を抑えるために役立つ制度です。
引越しの計画がある方は早めにハローワークに相談しておきましょう。
参考:(PDF)厚生労働省:「広域求職活動費」 と 「移転費」 のご案内[PDF]
求職者支援制度
| 目的 | 無料の職業訓練による再就職、転職、スキルアップ支援 |
| 支給条件 |
以下の要件をすべて満たしている方(給付金要件) ●本人収入が月8万円以下である |
| 支給額の目安 | 月10万円 |
雇用保険の加入歴がない方や、パート・自営業などで働いていた方でも職業訓練や生活支援を受けられる制度です。
一定の条件を満たすことで、無料の職業訓練を受けながら月10万円の給付金が支給されます。
該当するかどうかを早めに確認し、必要な準備を進めておきましょう。
参考:(PDF)厚生労働省:求職者支援制度のご案内[PDF]
特例一時金
| 目的 | 特定の離職者に対する一時的な支援 |
| 支給条件 |
以下の要件をすべて満たしている方 ●離職の日以前1年間に、11日以上働いた月が通算して6か月以上ある |
| 支給額の目安 | 基本手当日額の40日分に相当する額 |
雇用保険の加入期間が短く、失業保険を受給できない方を対象にした制度です。
非正規雇用や短期雇用で働いていた方も、条件に該当すれば利用できます。
受給資格がないと諦めずに、ハローワークで対象となる制度があるか確認しましょう。
参考:(PDF)厚生労働省:離職されたみなさまへ <特例一時金のご案内>[PDF]
高年齢求職者給付金
| 目的 | 高齢離職者への短期支援 |
| 支給条件 |
以下の要件をすべて満たしている方 ●離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある |
| 支給額の目安 | 被保険者であった期間が1年未満の場合は30日分の基本手当日額、1年以上であった場合は50日分の基本手当日額 |
通常の失業保険の対象外となる65歳以上の方でも、条件を満たすことで給付金を受け取れる制度です。
一時金として支給されるため、生活のつなぎとして活用できます。
詳細はハローワークで相談しましょう。
参考:(PDF)厚生労働省:離職されたみなさまへ <高年齢求職者給付金のご案内>[PDF]
傷病手当金
| 目的 | 病気やケガで働けない場合の所得補償 |
| 支給条件 |
以下の要件をすべて満たしている方 ●業務外の事由による病気やケガの療養のための休業である |
| 支給額の目安 | 以下で計算される額(支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準月額を平均した額)÷30日×1/3 |
退職後すぐに病気やケガで働けない場合、条件を満たせば傷病手当金が支給されることがあります。
該当しそうな場合は、健康保険組合などへ早めに問い合わせましょう。
参考:全国健康保険協会:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
退職給付金を受け取る手順
退職給付金の受給には、制度ごとに申請の流れがあります。
一般的な手続きの流れは以下のとおりです。
【一般的な手順】
- 離職票を受け取る
- ハローワークで求職の申し込みを行う
- 制度に関する説明を受け、申請書類を提出する
- 必要に応じて雇用保険説明会に参加する
- 申請内容の審査
- 認められれば給付金の受給開始
各制度には申請期限があるため、早めの対応が重要です。
不明点があれば、遠慮なくハローワークで相談しましょう。
関連記事:退職後の手続きでやるべき5つのこと&手続きの流れについて
退職給付金の申請に必要な書類
書類の不備によって手続きが遅れるケースもあるため、事前に必要書類を確認して準備しておきましょう。
【必要となることの多い書類・その他】
- 離職票:会社から郵送される
- マイナンバー確認のための書類:マイナンバーカード・通知カード・住民票のいずれか
- 通帳・キャッシュカード:本人名義のものを用意
- 身分証:運転免許証・健康保険証など
- 印鑑:認印でも可
- 証明写真:3cm×2.5cmのものを2枚
証明写真は、ハローワークの求職票などで使用します。
制度によって必要書類は異なります。必ず申請先に確認しましょう。
退職給付金制度を利用する際の注意点
退職給付金を確実に受け取るために、いくつか確認しておきたいポイントがあります。
制度を確実に活用するためには、以下の4点に注意することが大切です。
注意点①対象かどうかを確認する
それぞれの給付制度には明確な対象条件があります。
そのため、まずは申請を検討している退職給付金の対象となるかを確認しておかなければなりません。
自身で判断が難しい場合は、ハローワークや健康保険組合などに確認しましょう。
利用できると勘違いしていたものが利用できないとなると、生活設計が狂ってしまうこともあります。
早い段階で確認を済ませておくことが重要です。
注意点②申請の期限を確認する
制度によって申請期限が異なり、遅れると受給できなくなることがあります。
中には退職後すぐに申請が必要な制度もあるので、注意しましょう。
中でも、 失業保険などは、離職票を受け取ったらすぐに手続きが必要です。
遅れることで受給開始のタイミングが遅くなってしまう可能性があるほか、受給期間が短縮されることも考えられます。
タイミングを逃さないよう、スケジュールを立てて行動しましょう。
注意点③手続きの手順を確認する
手続きの流れを事前に確認しておきましょう。
給付金の中には、ハローワーク以外の機関で申請する制度もあります。
申請場所・方法・書類を間違えると、再手続きが必要になる場合もあるため、事前確認が欠かせません。
制度の詳細についてよくわからないことがある場合は、自分で調べて準備するよりも始めからハローワークなどの窓口で確認した方が確実といえます。
特に申請期限が迫っている場合などは不備なく進めていかなければなりません。
注意点④申請が認められない場合もある
申請すれば必ず支給されるとは限りません。
たとえば、就職の意思がないと判断された場合や、書類不備があった場合には不承認となる可能性があります。
虚偽の申告は給付金返還の対象にもなるため、正確に申請しましょう。
退職給付金を受け取る際に後悔しないためのポイント
給付金は「受け取ること」そのものが目的ではありません。
その後の生活設計にどのように活かすかが重要です。
「あのとき、もっと調べておけば良かった」と後悔するケースも少なくありません。
ここでは、意識しておきたいポイントを3つ紹介します。
ポイント①退職理由を確認しておく
たとえば、自己都合での退職と会社都合での退職では、失業保険の給付開始日や給付日数に大きな差があります。
そのため「実は会社都合での退職だったのに自己都合で処理されていた」ということがないように、離職票を受け取った時点で記載内容を必ず確認しておきましょう。
退職理由の区分はハローワークの判断によりますが、その際は離職票の内容が判断材料となります。
自己都合での退職扱いとなっていて納得できない場合は、証明書類を用意してハローワークに異議申立てを行いましょう 。
ポイント②ハローワークに早めに相談する
制度の内容が複雑な場合、自分だけで判断せずにハローワークへ相談するのが賢明です。
「自分には関係ない」と思っていた制度が実は利用可能だった、という例もあります。
退職給付金の制度は複雑であるため、よくわからない場合は迷うことなくハローワークに相談しましょう。
相談は無料です。
積極的に利用し、使える制度を見逃さないようにすることをおすすめします。
ポイント③必要書類を事前に揃えておく
申請をスムーズに進めるためには、必要書類を早めに揃えておくことが重要です。
特に期限が短い制度では、書類の不備で再提出となると手続きに間に合わない可能性もあります。
ですが、制度によっては申請期限が短く設定されており、書類の不備があった場合は準備し直している間に期限切れとなってしまう恐れもあります。
紹介した基本的な書類のほか、制度によっては追加で提出が必要な書類もあるのでよく確認が必要です。
早めに準備・申請することで、給付金の受給もスムーズになります。
利用可能な給付金を見逃さず活用しよう
いかがだったでしょうか。
退職給付金の概要や種類について紹介しました。
活用の注意点などもご理解いただけたでしょう。
迷いや疑問がある場合は、ハローワークなどの専門機関を頼って行動することが後悔しない選択につながります。
また、退職に関してお悩みの方は、退職代行ガーディアンまでご相談ください。
長年にわたり労働組合として多くの退職申請をサポートしてきました。
労働組合法人であるため、会社との交渉も可能です。
万が一、退職を認めない、あるいは嫌がらせなどの行為があった場合でも、労働法に基づいてしっかりと対応いたします。
無料相談も受け付けておりますので、ぜひご利用ください。
この記事の監修者
長谷川 義人
東京労働経済組合
労働組合代表
プロフィール
高校を3ヶ月で中退しフリーターとなる。その後、20歳で定時制高校に通い25歳で定時制大学を卒業。
Tech系ITベンチャー企業にてBtoB営業からキャリアをスタートし、独立して代表として経営まで幅広く経験。
現在は「令和ならではの労働問題解決」に取り組むため、労働組合法人東京労働経済組合の代表に就任。
適法運営を徹底する退職代行サービス「退職代行ガーディアン」を運営し、日本の退職問題の改善と人材の最適配置を支える新たな社会インフラの確立に取り組む。
違法な退職代行が横行する業界の健全化にも力を入れており、労働者が安心して「次の一歩」を踏み出せる社会の実現を目指している。

